2型糖尿病(DM)ではスタチン治療下でも、高トリグリセライド(TG)血症を呈する例が多い。そのためフィブラート追加によるTG低下を介したさらなる心血管系(CV)イベント抑制に期待がかかったが、大規模ランダム化比較試験(RCT)、FIELD、ACCORDはいずれも、フィブラート追加による有意なCVイベント抑制を証明できなかった。しかしその後、高TG血症だけでなく低HDL-C血症も合併している患者に限れば、フィブラートは高TG血症例の冠動脈イベントを抑制するとのメタ解析が報告された[Sacks FM, et al. 2010]。
このような知見を背景として、高TG、低HDL-Cを呈する2型DM例を対象に、フィブラートのCVイベント抑制作用を検討するRCT“PROMINENT”が実施されたが、ネガティブな結果に終わった。11月5日からシカゴ(米国)で開催された米国心臓協会(AHA)学術集会におけるAruna D. Pradhan氏(ブリガム・アンド・ウィメンズ病院、米国)の報告から紹介する。
PROMINENT試験の対象は、十分なスタチン治療下で「TG 200-499mg/dL」かつ「HDL-C≦40mg/dL」だったCV高リスク(CV既往/高齢1次予防)2型DM 1万497例である(日本からも305例を登録)。
年齢中央値は64歳、28%が女性だった。DM罹患歴は46%が「10年以上」、HbA1c中央値は7.3%である。TG中央値はおよそ270mg/dL、HDL-Cは33mg/dLだった。
背景治療を見ると、96%がスタチンを服用しており、LDL-C中央値は80mg/dL弱だった。
これら1万497例はフィブラート(ペマフィブラート0.2mg×2/日)群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で観察された。
その結果、TGは1年後、プラセボ群の「244mg/dL」に対しフィブラート群では「189mg/dL」まで低下し、この差は試験終了時までおおむね維持された。またHDL-Cも開始4カ月後にはプラセボ群に比べ2mg/dLの高値となっていた。
一方、フィブラート群では試験開始4カ月後、LDL-Cがプラセボ群に比べ11mg/dLの高値だった(試験開始時からの上昇率はプラセボ群よりも有意に大)。
そして3.4年(中央値)観察後、1次評価項目である「CV死亡・心筋梗塞・緊急血行再建を要する不安定狭心症・脳卒中」のフィブラート群における対プラセボ群ハザード比(HR)は1.03(95%信頼区間[CI]:0.91-1.15)となり、有意差はなかった。両群の発生率曲線は、試験開始から終了まで一貫して、ほぼ重なっていた。
また1次評価項目を構成するイベントを個々に比較しても、有意差はなかった。
さらに事前設定された20近いサブグループ解析(スタチン強度別、開始時TGの高低など)でも、両群間に有意差はなかった。
「総死亡」リスクにも、有意差はなかった(HR:1.04、95%CI:0.91-1.20)。
一方、有害事象は、重篤なものに限れば両群間に有意差はなかったが、フィブラート群では「腎イベント」が有意に多かった(10.7 vs. 9.6/100例・年、HR:1.12、95%CI:1.04–1.20)。また静脈血栓塞栓症も低頻度ながら、フィブラート群におけるHRは2.05(95%CI:1.35-3.17)だった(0.43 vs. 0.21/100例・年)。なお深部静脈血栓症の微増はFIELD試験でも報告されている。
この結果についてPradhan氏は、フィブラート群におけるLDL-C上昇がTG低下などによる有用性を打ち消した可能性を指摘した。
一方、指定討論者のKarol E. Watson氏(UCLA、米国)は、スタチンが広く使われるようになった現在では、少なくとも現存するフィブラートにはCV転帰改善を期待できないと結論。
というのも、フィブラート製剤がCV転帰を改善したRCTは1999年報告の“VA-HIT”(対象は低HDL-Cを呈する冠動脈疾患男性)が最後であり(同試験が実施された1990年代はまだ、著明な高コレステロール血症を除き、CV高リスクでもスタチンは頻用されなかった)、それ以降は前出のFIELD試験、ACCORD試験を含めすべてネガティブ試験だったためである。
本試験はKowa Research Instituteから資金提供を受けて実施された。また発表と同時に論文がウェブサイトで公開されている。