不安症の代表的な疾患のひとつである。突然前触れもなく、動悸、息苦しさ、めまい等の症状が出現する『パニック発作』を繰り返し、そのため「またあの『発作』が起きたらどうしよう」と過度に心配になって、外出などが制限されてしまう。以前は、19世紀の著明な精神科医S.フロイトによって、別稿の「全般不安症(全般性不安障害)」と共に『不安神経症』と言われていた。フロイトはその原因を“内的葛藤等によって抑圧された感情”としたものの、薬物治療が有効なことがわかり、1980年に米国精神医学会によって独立した精神疾患として命名された。病態としては、扁桃体の病的過活動や前頭前野の機能低下が示唆されている。
突然生じる(予期しない)反復性(2回以上)の『パニック発作』を経験したことで、「またあの発作が起きたらどうしよう」と耐えず不安に思い(=予期不安)、そのため自己の行動が制限されてしまう(例:発作が生じた場所を避ける)。
『パニック発作』とは、突然の、数分以内にピークに達する、強烈な恐怖または激しい不快の高まりで、診断的には以下の13の症状のうち4つ以上の症状が必要である。
(1)動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
(2)発汗
(3)身震いまたは震え
(4)息切れ感または息苦しさ
(5)窒息感
(6)胸痛または胸部の不快感
(7)嘔気または腹部の不快感
(8)めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
(9)寒気または熱感
(10)異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
(11)現実感消失(現実ではない感じ)または離人感(自分自身から離脱している)
(12)抑制力を失うまたは“どうかなってしまう” ことに対する恐怖
(13)死ぬことに対する恐怖
過呼吸による呼吸性アルカローシスを認めることがあるが、それ以外の異常所見はない。しかしながら、同じような症状を呈する甲状腺機能亢進症や狭心症、心筋梗塞、低血糖等の身体疾患の除外のための検査は必要である。
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