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■NEWS 【欧州心臓病学会(ESC)】リウマチ性心疾患心房細動に対するDOACはビタミンK拮抗薬に勝らず:RCT"INVICTUS"

登録日: 2022-08-30

最終更新日: 2022-08-30

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非弁膜症性(NV)心房細動(AF)には頻用されている直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)だが、リウマチ性心疾患AFへの有用性は不明である。この点を明らかにすべく実施されたランダム化比較試験(RCT)"INVICTUS"が、バルセロナ(スペイン)で開催された欧州心臓病学会(ESC)学術集会で報告された。転帰改善作用はビタミンK拮抗薬(VKA)に有意に劣るなど、予想外の知見が続いた。28日のGanesan Karthikeyan氏(全インド医科学研究所)による報告から紹介したい。

INVICTUS試験の対象は、「僧帽弁狭窄」、あるいは「CHA2DS2VAScスコア≧2」か「心エコー上左房血栓」を認めた、AF合併リウマチ性心疾患4531例である。アフリカ、アジア、ラテンアメリカを中心とする24カ国から登録された。

患者背景は、すでに報告されているNVAF対象大規模RCTとは大きく異なった。 まず、より「若年」(平均年齢:50.5歳)で、「女性」の割合が高かった(72.3%)。また(当然だが)僧帽弁狭窄例の占める割合が85.3%と高く、一方、43.6%が「CHA2DS2VAScスコア:0-1」だった。

これら4531例は、DOAC(リバーロキサバン20mg/日。腎機能低下例では減量)群(2275例)と、VKA(目標INR:2-3)群(2256例)にランダム化され、非盲検下で観察された。

その結果、平均3.1年間の観察後、「脳卒中・全身性塞栓症・心筋梗塞・血管系/原因不明死亡」(1次評価項目)の発生率は、DOAC群:8.2%/年、VKA群:6.5%/年となり、DOAC群でリスクは有意に高かった(ハザード比[HR]:1.25、95%信頼区間[CI]:1.10-1.41)。

これら1次評価項目中、大半を占めたのは「死亡」であり、やはりDOAC群のリスクが有意に高かった(HR:1.23、95%CI:1.09-1.40)。Karthikeyan氏によれば、両群間の死亡の差は主として、「心不全死」と「突然死」によりもたらされた(「心不全入院」には群間差なし)。

なお、試験期間中の心不全治療薬の使用状況は、両群間で同様だったという(VKA群におけるINR測定のための頻回受診が、心不全治療を変えたわけではない)。 また、両群間の「大出血」と「頭蓋内出血」発現率には差がなかった。

いずれにせよ、脳卒中・塞栓症、出血の差だけではDOAC群における死亡リスク増加(「最も予想外の結果」とKarthikeyan氏)の説明はつかないため、さらなる解析が待たれる。

本試験でもう1つ目を引いたのは、VKA群の良好な「治療継続率」と「INR達成率」だった。 試験開始4年後の継続率は、DOACが79%だったのに対し、VKAは96.4%だった。VKA群におけるこの高継続率の理由も不明だという。

さらに、VKA群の「INR:2-3」達成率の推移を見ると、試験開始直後こそ33.2%だったものの、1年後には59.0%まで改善され、2年後にはさらに65.3%まで上昇。その後はそのレベルが維持された。

なお、両群の1次評価項目発生曲線は、当初VKA群が上を行っていたが、途中でDOAC群と交差して下となり。試験終了時まで差は拡大し続けた。そしてその交差を認めたのは、試験開始後およそ18カ月の時点だった(ただしKarthikeyan氏は、INR改善と転帰向上の因果関係に懐疑的)。

さて、予想外に低く感じられるDOAC群の継続率だが、先行するNVAF対象RCTでも同様だとKarthikeyan氏は指摘する。確かに、RE-LY、ROCKET-AF、ARISTOTLE、ENGAGE-AFの各試験においても、DOACの中止率は、20~35%だった。

本試験はBayerからの資金提供を受けて実施された。 また報告と同時に、N Engl J Med誌ウェブサイトで公開された[Connolly SJ, et al. 2022.]。

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