小児脳腫瘍は,小児がんの中では白血病についで症例数が多く,小児がんの死亡原因の第1位を占める。小児期に好発する脳腫瘍には様々な希少疾患が含まれ,代表的なものとしては毛様細胞性星細胞腫,髄芽腫,膠芽腫,胚細胞腫,上衣腫,非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍などが挙げられる。生存率が80%を超える疾患から依然として20%を下回るような疾患も含まれる。また,腫瘍そのものの影響や治療合併症として,運動機能や認知機能,内分泌機能,成長,発達,二次がんなどの障害が生じる場合もあり,治療後も長期的なフォローや支援が必要である。
脳腫瘍の症状としては,腫瘍の発症部位に応じて正常の機能が障害されて生じる症状や頭蓋内圧亢進症状がみられる。頭痛や嘔吐,意識障害,痙攣,麻痺,眼振や視野・視力障害,尿崩症や思春期早発,乳児の頭囲拡大など発症部位や年齢により異なる。小児のcommon diseaseと類似の症状を示すことも多いが,脳腫瘍の鑑別を念頭に置いておくことは重要であり,どのような場合に脳腫瘍を疑い精査を行うかについては,英国で小児脳腫瘍の早期発見をめざす活動のひとつとしてつくられたHeadSmart symptoms cardも有用である。感染徴候のない持続する頭痛や嘔吐(特に起床時)や神経症状がある場合には,脳腫瘍を疑い画像検査を行う。緊急性の高い場合はまずCT検査を実施するが,脳腫瘍の精査のためには造影MRIが望ましい。
脳腫瘍は,画像診断で疑われ病理所見で診断確定となることがほとんどである。原則としてWHO分類に基づいて分類されるが,2016年の改訂以降は病理組織所見だけでなく遺伝学的解析の結果が積極的に取り入れられ,それらを合わせた統合診断が推奨されている。したがって,適切な検体採取と脳腫瘍に精通した医師による病理診断,解析が必須である。一方で,脳幹部グリオーマや視神経膠腫のように,生検に伴う合併症のリスクが高い疾患では,画像診断のみで治療が開始される場合や,大脳神経膠腫症(グリオマトーシス)のように画像だけでは脳炎脳症との鑑別が難しい場合もある。
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