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【識者の眼】「自治体における健康増進計画策定の意義」北村明彦

No.5098 (2022年01月08日発行) P.59

北村明彦 (八尾市保健所健康まちづくり科学センター総長)

登録日: 2021-12-03

最終更新日: 2021-12-03

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わが国の「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」は2000年度に開始され現在の健康日本21(第二次)に引き継がれている。循環器疾患やがん等の生活習慣病予防のための生活習慣の改善等の課題について細やかに具体的な目標を設定し、国民が主体的に健康づくりに取り組めるよう行政や関係機関が支援するという理念を具現化するため、都道府県および市町村は、健康増進法に基づき健康増進計画を策定し各々の施策に取り組んできた。

私が勤務する大阪府八尾市では健康増進計画の次期計画がコロナの影響により延期され、現在策定中である。その内容は昨今の状況をふまえ、生活習慣病予防にとどまらず、健康寿命延伸に大きく影響するフレイルの予防、および新型コロナウイルス感染症防止のための新しい生活様式に対応した健康づくり、そして市民の健康を支える地域づくりの推進など多角的な構成となる予定である。

例えば、コロナ禍での外出自粛の影響として、高齢者のフレイルや認知症の増加が社会的に懸念されているが、軽視できないのがメタボリックシンドローム対策である。厚生労働省専門部会では健康日本21(第二次)の評価として、メタボリックシンドロームの該当者・予備群の人数が計画策定時(2008年度)の約1400万人から最終評価時(2019年度)は1516万人へと増加したことから「悪化している」と判定した。この状況にコロナ太りが追い打ちをかける。八尾市においても、市民意識調査により、新型コロナウイルス感染症の影響により、運動の機会や運動量が減少した人は30%以上増加し、冷凍・レトルト・インスタントの食品による食事の回数が増えた人、出前、弁当・惣菜による食事の回数が増えた人の割合も各約20%増加、体重が増えた人は約25%との結果を得た。したがって、新しい生活様式下でのメタボ対策の推進は急務の課題である。

このためには、食生活改善や運動など個人の行動変容を啓発するのみでは不十分であり、国の健康寿命延伸プランに掲げているように、「健康無関心層も含めた予防・健康づくりの推進」に向け、「自然に健康になれる環境づくり」や「行動変容を促す仕掛け」などの手法が必要と考えられる。こうした官(=国)が示したプランを公(=自治体)が実現するためには、地域診断データに基づき、地域性や住民性をふまえた「まちづくり」という観点からの施策を展開することが求められる。自治体で策定する健康増進計画はその羅針盤に位置づけられるべきものであろう。

北村明彦(八尾市保健所健康まちづくり科学センター総長)[健康増進計画]

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