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【識者の眼】「東京都における20〜39歳のワクチン接種に関する調査〜特に接種がこれからの方の分析と対応〜」和田耕治

No.5091 (2021年11月20日発行) P.56

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2021-11-02

最終更新日: 2021-11-02

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2021年10月26日〜28日に、東京都の20〜39歳を対象にワクチン接種のインターネット調査(n=636)を行ったので、接種がこれからの方に焦点を絞って報告する。

対象者の75%が接種1回以上終わったと回答していた。接種はこれからで「もう少し考えたい」は11%、「自分自身の判断により接種しない」は10%であった。周囲から反対されているので接種しないは1%であった。

接種した人と比べて接種がこれからの人の特徴を潜在クラス分析したところ、

①感染する不安は低く、周囲の感染者も少ない。しかし、副反応の不安が大きめ

②感染する不安は低く、周囲の感染者も少ない。副反応の不安が大きいわけではないが、関心がなさそう

という特徴が確認された。特に①の方が全体の半数を占めた。

感染する不安が低いということについては、例えば職業が自営業であったり、他の人と会う頻度も少ない可能性、そして、知り合いに感染者がいない(いたとしても話を聞いていないだけかもしれない)ということがあっての認識かもしれない。

調査前は、感染リスクが高いのに健康への意識が高くない人や、既に感染した人が接種に後ろ向きなのではないか、との想定もあったが、データからはそうした面は見られなかった。

今後は接種を若者にどう呼びかけていったらいいのか。難しいフェーズに入ってきている。

副反応への不安は、接種がこれからの人において高かった。接種後しばらくして(中長期的に)副反応が生じる可能性は、現段階では特に明らかではない。しかし、「ない」とも言い切れないし、「数年程度経たないとわからない」というのが正しい答えだとしても、むしろそこに不安を持つ人がいる。既に接種した人でも61%が心配と回答し、接種がこれからの方では76〜80%が心配だと回答していた。

3回目の接種の話題も出ているが、引き続き副反応の可能性やその場合の対応については丁寧なコミュニケーションが求められる。

この調査からは、何らかのインセンティブを付ければ接種が進む状況ではもはやないと考えられた。メディアやインフルエンサーによる呼びかけが接種を促進するということでもなさそうである。

むしろ、「不安だけど、これからでも接種をしたい」という気持ちになった方の相談対応や接種場所の確保は引き続き必要と考えられた。

最後に、参加者のバイアスの可能性、また東京都以外であれば状況が異なる可能性は言うまでもない。今後の対策の検討の参考になれば幸いである。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

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