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特集:急性腹膜炎の画像診断─腹膜炎を感じ取る画像所見とは

No.5077 (2021年08月14日発行) P.18

谷掛雅人 (京都市立病院放射線診断科・IVR科部長)

登録日: 2021-08-13

最終更新日: 2021-08-11

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谷掛雅人
1995年,大阪医科大学卒業。専門医機構認定放射線診断専門医,日本IVR学会認定IVR専門医。得意分野は救急疾患の画像診断,IVR。専門と人に誇れるものはないが,日本一便利な放射線科医でありたいと思っている。

はじめに─急性腹膜炎の画像所見
腹膜は薄い構造であり通常はCTでは認識しにくいが,腹腔内の臓器,腹壁を覆う広範囲に存在する。いったん炎症を生じると,その変化を表した異常所見が様々な部位に認識できるようになる。今回,その急性腹膜炎のCT所見について,5つのポイントを中心に解説する。
腹膜の正常像
・腹膜には腹壁を覆う壁側腹膜と各臓器を覆う臓側腹膜がある。
・CTにおける正常像は,壁側腹膜は腹腔内外の脂肪組織の間にかすかに認識できる程度,臓側腹膜は視認できない。
急性腹膜炎を感じ取る画像所見
・急性炎症部に生じている病理学的変化は,動脈血流の増加(充血)と炎症性の浮腫である。
・画像所見も基本的にこれを反映したものとなる。

ポイント1 腹膜の肥厚
・炎症を起こすと腹膜は肥厚する。
・壁側腹膜は,造影効果のある均一な厚さの線状構造として認識できるようになる。
・臓側腹膜も腸間膜の漿膜が観察できることがある。

ポイント2 腹腔内脂肪組織濃度の上昇
・脂肪組織濃度の上昇はdirty fat signとして知られる。
・腹腔内の脂肪組織は腸間膜のものと大網のものに区分され,どこの脂肪なのかを意識して観察するとよい。
・腸間膜の脂肪組織濃度上昇は,責任病変の近傍にびまん性の濃度上昇として認められる。
・一方大網は,内部の拡張した血管により網目状の構造を含んだ濃度上昇として認められ,責任病変の局在に関係なく認められることが多い。

ポイント3 造影CT動脈相における肝表面の異常濃染
・炎症で,臓側腹膜である肝被膜の動脈血流が増加した所見である。
・原因を問わず腹膜炎にて認められる非特異的な所見である。

ポイント4 小腸の変化
・内腔が拡張した麻痺性イレウスの像を示す場合と,均一な強い造影効果を示す壁肥厚(腹膜炎小腸)を示す場合がある。
・麻痺性イレウスは様々な原因で起こるが,常に腹膜炎に合併したものの可能性を念頭に置くことが大事である。
・後者の壁肥厚も,小腸型の感染性腸炎などで似たような所見が認められ,特異的とは言えない。
・いずれも目に入りやすい所見であり,安易な診断は誤診につながる。腹膜炎の可能性を念頭に,各ポイントに示した他の所見の有無を確認する。

ポイント5 不自然な腹水
・通常の腹水は,既存の構造の隙間に,重力に従って分布する。
・しかし腹膜炎時には,膿性で粘稠度が高い腹腔内の癒着という理由で,既存の構造や重力に反するような,不自然な形態の貯留を認めることがある。
・通常の腹水よりやや高い濃度を示す。

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