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電撃傷[私の治療]

No.5062 (2021年05月01日発行) P.72

佐藤幸男 (慶應義塾大学医学部救急医学教室)

登録日: 2021-05-02

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  • 電撃傷は人体内に生体電気以外の電流,一般に高電流が流れることによって生じる生体の障害である1)。人体内では骨格筋や神経は電気抵抗が低いため電流が流れやすく,損傷を受けやすい。人体内を電流が流れることで心室細動などの致死的な不整脈をきたしうる。電撃傷では電流やアーク放電による深部組織への損傷(真性電撃傷)だけでなく,衣類への着火による熱傷(電気火傷)や衝撃による転倒・転落により骨折・脱臼などの付随する外傷をきたしうる。電流と皮膚の接触部位は電流斑(電流出入口部の潰瘍,炭化や凝固壊死)を形成し,電流出入口部の抵抗と電流との接触面積により損傷の程度は異なるため重症度は創の大きさに一致しないが,電撃傷の診断根拠にはなる。筋肉の損傷は時間とともに拡大し壊死することがあり,大量の筋壊死によりミオグロビン尿,急性腎障害をきたしうる。したがって,熱傷治療専門施設(わが国に明確な施設認定基準はないが,日本熱傷学会による熱傷専門医認定研修施設が存在する)で治療することを勧める。
    また,雷の電流による電撃傷は「雷撃傷」として区別され,夏季によくみられる。雷は直流電流であり,直撃した場合は通常致命的で即死する一方,遷延死は稀とされている。生存可能であった症例は多くの場合,損傷は間接的に空気を介して電流が流れたことにより生じたと考えられている2)

    ▶病歴聴取のポイント

    電流が伝導したことによる症状には意識消失,痙攣,四肢の麻痺,熱傷部位の疼痛がある。胸部症状がある場合は心血管損傷を疑う。高度な筋損傷が存在する場合はミオグロビン尿を呈する。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    Advanced Burn Life Support(ABLS)に基づいて診療を開始する3)

    primary surveyで特に注意すべき点は,転落外傷が疑われる場合の頸椎保護と気道確保である。100%酸素をリザーバーマスクで投与して,末梢静脈路を2箇所確保し,初期輸液蘇生を開始する。四肢の全周性の熱傷がないかを評価し,全周性熱傷に対しては減張切開を行う。高圧電流による損傷では脊髄損傷を疑う。すべての衣類と貴金属を外す。

    secondary surveyではすべての電流斑を同定する。特に手・足・頭皮を注意して探す。直接的な神経障害またはコンパートメント症候群による運動障害・感覚障害の有無についての評価と付随する外傷の評価を行う。

    電流斑の位置から電流が通電した皮膚,筋肉,腱などを推定する。四肢の通電では麻痺の有無や皮膚の炭化,脈の喪失,肘・腋窩・鼠径・膝窩の熱傷の有無をみる。低電圧の電流の場合,身体所見にほとんど異常はなく,筋損傷をきたすことは稀であるが,骨格筋の疼痛や神経学的異常,意識状態の変化を遅発性に起こしうる。しかし,濡れた皮膚の場合は電気抵抗が減ずるため致死的不整脈をより起こしやすくなる。高電圧の電流は組織損傷をきたし,深部組織の壊死をもたらし,創傷遅延・四肢の切断・死亡の危険がある。

    アーク放電による損傷の場合には,放電により露出した皮膚への閃光による熱傷や衣類への二次的な着火に伴う熱傷を認めうる。金属類を身に着けていた場合は,それらが熱を持ち,範囲は狭くとも深い接触熱傷をきたしうる。電流が体内に流れると骨格筋の強直性収縮をきたすため,転倒や転落による外傷(骨折・脱臼など)を伴いうる。

    雷撃傷は脳損傷による呼吸停止と,心筋損傷による心静止をもたらしうる。雷紋が認められ,電流の流れた方向が推測できる。現場での速やかな心肺蘇生処置の開始と搬送先医療機関でのAdvanced Cardiac Life Support(ACLS;二次心肺蘇生法)が必須である。

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