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糖尿病網膜症[私の治療]

No.5051 (2021年02月13日発行) P.42

吉田茂生 (久留米大学医学部眼科学講座主任教授)

登録日: 2021-02-16

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  • 糖尿病網膜症(diabetic retinopathy)は,糖尿病による高血糖を主体とした代謝異常が長期間反復持続し,網膜細小血管が障害される血管原性疾患である。初期病変として内皮細胞の機能異常,周皮細胞の脱落と血管壁の基底膜肥厚がみられる。
    糖尿病下で傷害された網膜細小血管では,血流障害や血管透過性亢進が観察される。進行すると網膜細小血管閉塞をきたし,血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)をはじめとしたサイトカインが放出されて網膜新生血管が生じ,硝子体出血や牽引性網膜剝離を生じる。
    視機能に重要な役割を果たす黄斑部に生じた病変を糖尿病黄斑症と呼ぶ。黄斑症はさらに糖尿病黄斑浮腫,虚血黄斑症,黄斑部網膜色素上皮症の3つに分類される。

    ▶診断のポイント

    病態が重症になるまで自覚症状がないのが特徴である。内科と眼科の連携強化を図り,定期受診が必要であることを患者に十分説明し,病識を持たせるように努める。

    ①増殖性変化が進行し硝子体出血を併発すれば飛蚊症や視力低下,②牽引性網膜剝離を併発すれば視力低下や視野狭窄など,③糖尿病黄斑症を併発すれば視力低下や変視症を生じる。病態に応じた適切な治療が必要である。

    細隙灯顕微鏡検査で角膜障害,虹彩ルベオーシス,白内障の有無を確認し,前置レンズを用いて網膜硝子体界面の詳細な観察を行う。倒像鏡眼底検査では毛細血管瘤,出血,数珠状静脈拡張,網膜内細小血管異常(IRMA),新生血管,硝子体出血などを観察する。蛍光眼底造影検査では毛細血管瘤,血管透過性亢進,毛細血管床閉塞,新生血管,虚血黄斑症などが描出される。光干渉断層計(OCT)では網膜膨化,嚢胞様黄斑浮腫,漿液性網膜剝離など糖尿病黄斑浮腫に特徴的な所見を検出する。中間透光体の混濁により眼底透見困難な場合,超音波検査を行い,網膜剝離の有無や増殖膜の部位・範囲などを確認する。

    病期としてDavis分類,福田分類,ETDRS(Early Treatment Diabetic Retinopathy Study)分類,国際重症度分類等が提唱されている。糖尿病罹病期間とHbA1c高値は網膜症発症の有意な危険因子である。

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