角膜ヘルペスは単純ヘルペスウイルス(HSV)による角膜炎であり,眼瞼炎・結膜炎という形で初感染したHSV-1が三叉神経節に潜伏した後,再活性化して生じる。上皮型はウイルスが神経節から下行性に角膜上皮に到達し,上皮細胞に感染を起こすことによって生じる。一方,実質型はウイルスに対する免疫反応と考えられており,しばしば血管侵入を伴う。すなわち,同じ角膜ヘルペスでありながら上皮型と実質型とでは治療へのアプローチがまったく異なる。
本来の確定診断は病巣部からのウイルス分離とされているが,臨床的には行われておらず,特徴的な細隙灯顕微鏡所見(膨大部を伴う樹枝状角膜炎,上皮内浸潤など)と,角膜知覚検査(僚眼と比べ知覚低下がみられる),免疫クロマトグラフィー法やPCR法などの補助診断法を併用して診断することになる。
実質型は円板状角膜炎,壊死性角膜炎,栄養障害性角膜潰瘍の3病型にわけられる。いずれもその細隙灯顕微鏡所見,すなわち,円板状角膜炎は角膜中央の円形の実質浮腫と病巣内の比較的大きい角膜後面沈着物,壊死性角膜炎は角膜実質に血管侵入,瘢痕形成,脂肪変性が混在している状態,栄養障害性角膜潰瘍はこれら実質型の既往に加えて遷延性上皮欠損に至っている状態,といった所見,そしてその再発性などの臨床所見から診断する。
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