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年内にも制度化するオンライン診療の課題と可能性(菅原誠太郎 カラダメディカ代表取締役/聖マリアンナ医大助教)【この人に聞きたい】

No.5040 (2020年11月28日発行) P.14

菅原誠太郎 (カラダメディカ代表取締役/聖マリアンナ医大助教)

登録日: 2020-12-02

最終更新日: 2020-12-04

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これからは患者と医師が一緒に治療していく時代
オンライン診療が選択肢の1つとなるよう
医師・事業者として普及に努めていきたい

すがわら せいたろう:2010年福井医大卒。18年慶應義塾大院経営修士課程修了。同年(株)カラダメディカ代表取締役。救命救急医師として従事する傍ら、ビジネススクールで病院経営を学び、現在は代表取締役としてカラダメディカにてオンライン診療の事業を推進。聖マリアンナ医大助教。日本救急医学会 救急科専門医。

恒久化に向けた制度設計の議論が本格化しているオンライン診療。10月9日には関係3閣僚が「映像を原則」「初診はかかりつけ医に限定」などの方針で合意した。“第4の診療形態”として期待されるオンライン診療の課題と可能性について、現役の医師でありオンライン診療システム事業を展開する菅原誠太郎氏に話を聞いた。

医療現場の業務効率化にICTの力を活用

─救急医として勤務しながら、ヘルステック事業を手がけることになった経緯を教えてください。

医学部を卒業後、研修医として大げさではなく朝から晩まで働き、「このままでは死んでしまう」と感じるような生活を送っていました。その中で病院の経営効率がとても悪いということを知りました。

私だけでなく、多くの医師が必死に毎日働いているにもかかわらず、「なぜ経営が厳しいのだろう」と疑問を抱くようになり、院内の各所を注意して観察したとき、非常に多くの非効率な作業が存在していることに気づいたのです。

こうした医療現場の状況を「変えなくてはいけない」という使命感が芽生え、そのためには経営を学ぶ必要があると感じました。そうした経緯で、日本救急医学会の専門医取得後、慶應義塾大学のビジネススクールに入学しました。

マーケティングのゼミでは、エムティーアイの社外取締役を兼任している准教授の講義を受けました。「医療機関や薬局に寄り添ったシステム」を目指すエムティーアイの事業を知るうちに、ICTの力を活用することで医療機関の経営を効率化できる可能性を感じ、グループ会社のカラダメディカの代表取締役に就任したのです。

─医療ICTの中から事業としてオンライン診療システムを選択したのはなぜでしょうか。

私は救急の専門医ですが、地方の病院で内科外来を担当していたこともあります。患者さんの多くは慢性疾患の高齢患者さんで、30分かけて病院までご家族が車で連れてきて、診察は5分で終わり、また30分かけて自宅に帰る、という状況が当たり前でした。患者さんは医師に診てもらえると安心しますが、状態が安定しているのにこれを毎月繰り返すのは社会的に費用対効果が悪いと感じました。同じようなことが日本各地で行われているのです。オンライン診療を活用すれば、患者さんのメリットを維持しつつ、ご家族の負担も軽減できると感じ、事業として展開することにしたのです。

普及のカギは使いやすいシステムであること

─オンライン診療は政府肝煎りで推進されていくことになりますが、普及は進むでしょうか。

本格的な普及に向けて一番大切なのは、医療機関と患者さんの双方にとって“使いやすいシステム”であることです。いくら機能的に優れたシステムであっても、広く使ってもらわなければ効果は限定的です。こうした観点から「CARADA オンライン診療」は、全サービスをブラウザで完結できる仕組みにしています。アプリのダウンロードやWebの設定には少なからず手間や時間がかかりますので、ブラウザでそのまま利用できる点がユーザーから喜ばれています。

一方でサポートサービスの充実も重視しています。導入してもらっても、活用してもらわなければ意味がありません。機能を絞っているため操作はシンプルで、数回経験すれば問題なく活用できるようになることから、最初の1カ月は全国の拠点に在籍する営業担当者が積極的にアフターフォローを行っています。

インセンティブとなる診療報酬点数の設定が必要

─普及に向けては制度設計も重要ですが、ポイントはどこになると考えますか。

診療報酬点数の設定だと思います。オンライン診療は医療機関にとって新しい取り組みです。新しいことを始めるには、明確なメリットが必要になります。例えば慢性疾患のフォローについては、対面診療と同じ点数にするなど、医療機関のモチベーションを上げるようなインセンティブを設定することがカギになると思います。そのためには対面と遜色ない医療が提供できていることをエビデンスで示さなくてはいけません。

オンライン診療システムの各事業者が協力して、データを出していくことなども必要になってくると考えています。

─オンライン診療に対する患者の理解は進んでいるのでしょうか。

患者さんが「自分はオンライン診療の対象なのか」ということが分かっていないケースが多いという話をよく耳にします。そこで具体的な対象疾患名を明記した患者さん向けポスターを作成し、クリニックに配布しています。一度利用すると、自宅で診察時間になるまでほかのことができ、診察が終わると翌日薬が届くというオンライン診療ならではのメリットを実感してもらえると思います。

患者と医師が一緒に治療について考えるツールになる

─オンライン診療はどのように活用されていくべきと考えますか。

COVID-19の感染拡大をきっかけに、例えば基礎疾患を持つ高齢者の方が、オンラインで代替可能な定期的なフォローのために感染リスクのある医療機関で受診するという受療行動は変化していくべきだと考えています。現在は1つの疾患に対し、いくつもの治療の選択肢があります。患者さんの生き方を含め、患者さんと医師が一緒に治療について考えていく時代になりつつあります。選択肢の1つとしてオンライン診療は有用なツールとなりうると思います。

─オンライン診療はあくまで選択肢の1つということですね。

対面診療のすべてがオンライン診療に置き換えられることはないと思います。私の専門である救命救急など、もちろん適さない診療科もあります。また慢性疾患であっても普段と違う症状が出たときなどは医療機関を受診すべきです。

ただ患者さんに対して複数の選択肢を用意することによって、患者さんが積極的に自分の健康に関与するようになる効果があると考えています。より多くの方がメリットを享受できるように我々オンライン診療システムの事業者が努力して導入件数を増やし、身近な医療機関のどこででもオンライン診療を受けられる環境をつくっていきたいと考えています。

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