昨年の国際腎臓学会ではランダム化試験“CREDENCE”が報告され、腎疾患を合併した2型糖尿病例に対するSGLT2阻害薬の心腎保護作用が示された。本学会では非糖尿病をも含む腎機能低下例を対象としたDAPA-CKD試験が報告され、SGLT2阻害薬は2型糖尿病合併の有無にかかわらず、腎機能低下例に対する心腎保護作用が示された。フローニンゲン大学(オランダ)のHiddo Heerspink氏が報告した。
DAPA-CKD試験の対象は、推算糸球体濾過率(eGFR)が「25~75mL/分/1.73m2」かつ、尿中アルブミン・クレアチニン比(UACR)が「200~5000mg/g」で、忍容最大用量のレニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS-i)を服用していた4304例である。1型糖尿病、器質的腎疾患が明らかになっている例は除外されている。
平均年齢は62歳、約3分の1が東洋人だった(日本からも244例を登録)。eGFR平均値は43mL/分/m2、UACR中央値は950mg/g前後だった。また97%がRAS-iを服用していた。
これら4304例はSGLT2阻害薬ダパグリフロジン10mg/日群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で2.4年間(中央値)観察された。SGLT2阻害薬群における成績が良かったため、早期中止となっている。
その結果、1次評価項目である「eGFRの半減持続、末期腎不全移行、心・腎疾患による死亡」のリスクは、SGLT2阻害薬群で相対的に39%の有意低値となった(ハザード比[HR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.51-0.72) 。1イベント減少させるために必要な治療数(NNT)は19だという。またSGLT2阻害薬群におけるこれらイベントの有意減少は、2型糖尿病合併の有無にかかわらず認められた(交互作用P=0.24)。
また重篤な有害事象、有害事象による服薬中止はいずれも、SGLT2阻害薬群で低い傾向が見られた。
さて、2次評価項目の1つである腎複合イベント(eGFRの半減持続、末期腎不全移行、腎疾患による死亡)も、SGLT2阻害薬群におけるHRは0.56(0.45-0.68)だった。同じく2次評価項目の「心血管系(CV)死亡・心不全入院」(HR:0.71、0.55-0.92)、「総死亡」(HR:0.69、0.53-0.88)のいずれも、SGLT2阻害薬群でリスクは有意に低下していた。
一方「CV死亡」は、SGLT2阻害薬群における有意なリスク減少を認めなかった(HR:0.81、0.58-1.12)。そこで議論になったのが、ならば総死亡のリスク減少は何によってもたらされたのかという点だ。Heerspink氏は今後の検討が必要だとしながらも、「死因の分類ミス」に加え「感染症死の減少」が寄与している可能性があるとの見解を示した。今後の報告を待ちたい。
本試験は、AstraZenecaから資金提供を受けて実施された。