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診療所救急〈高齢者・在宅〉─診療所における救急対応および予防的介入のコツ[プライマリ・ケアの理論と実践(9)]

No.4956 (2019年04月20日発行) P.8

田中啓太 (いくわ診療所所長)

登録日: 2019-04-19

最終更新日: 2019-04-17

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SUMMARY
高齢者では非典型的な経過をたどる救急疾患に注意する。プライマリ・ケアの現場では,不要な救急搬送や入院を事前に防ぐことも重要であり,日頃から効果的なケア介入を意識して行う必要がある。

KEYWORD
ambulatory care sensitive conditions(ACSCs)
適切なタイミングで効果的なケアを行うことで入院リスクを減らすことができる状態。ハイリスク患者に対して,救急搬送や入院を回避させるための介入が必要である。

田中啓太(いくわ診療所所長)

PROFILE
三重で初期研修・家庭医療後期研修を修了後,東京ふれあい医療生活協同組合梶原診療所で在宅フェロー修了。2019年4月より三重県四日市市で総合診療の発展に努めている。

POLICY・座右の銘
経験することは未来につながること

1 急性期アセスメントの実際

症 例
80歳男性 主訴:元気がない
現病歴:COPD(慢性閉塞性肺疾患)で通院中。昨日から元気がなく食欲低下。発熱なし,SpO2 92%(普段は96〜98%),呼吸回数24回/分,ラ音聴取。胸部レントゲン写真で肺炎あり。外来治療可能と判断したが,独居のため入院対応。

1 病歴と身体診察の重要性

高齢者は,非典型的な症状経過や身体所見を示しやすい。さらにmultimorbidity(多疾患併存),polypharmacy(多剤併用),認知機能低下を伴うと病態が複雑化しアセスメント困難となる。また「いつもと違う」「何となく調子が悪い」という訴えに重篤な疾患が隠れている場合も多く,軽視できない。自施設以外の複数医療機関に通院していることも多く,お薬手帳等による処方薬確認も忘れてはならない。
診療所や在宅では,施行できる検査に限りがあり迅速性に劣るため,病歴と身体診察が何より重要である。日頃からきちんとバイタル測定や身体診察を行い,記録に残しておくことが急性期のアセスメントに役立つ。

2 入院適応の考え方

医学的適応のみで判断できないことが多く,個々の症例で総合的判断が必要である。集中治療を要する重篤な疾患であっても,たとえばターミナル患者や超高齢者,自宅で過ごしたいという強い意志・覚悟がある場合は,在宅で可能な治療を行うこともある。反対に,在宅での治療が十分可能と判断しても,本人や家族の状況・希望により入院対応とする場合もある。ただ,高齢者では入院による弊害(認知機能低下,せん妄,ADL低下,転倒など)への配慮も必要である。病態の予後予測,診療所のフォロー体制,後方支援病院の状況などもふまえた個別的な総合判断が求められる。

この際,患者-家族-医療者間のきめ細かなコミュニケーションが必要であり,アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を有意義に活かす場面でもある。帰宅とした場合でも病状悪化の可能性を考慮し慎重に経過観察し,一時的に介護負担が増す場合もあるため介護連携が必要である。

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