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がん診断後の精神科系薬剤の処方実態

No.4939 (2018年12月22日発行) P.59

佐藤泉美 (京都大学薬剤疫学)

登録日: 2018-12-25

最終更新日: 2018-12-17

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【一般病院と精神科医がいるがん診療連携拠点病院とで,薬剤選択等に差がある可能性がある】

がん患者の30~50%は何らかの精神的疾患を併発し,生活の質や生存率,治療への意欲に負の影響を及ぼすことが報告されている。しかし,がん専門医は精神疾患の専門家ではなく,患者の精神的不調に気づきにくい場合や,患者側も精神的不調を医師に訴えない,などの複合的な理由から,精神的疾患の見逃しや過小評価や適切な治療が提供されていない可能性が指摘されている。

厚生労働省は,国民が全国で等しく緩和や精神的ケアを含めた質の高いがん治療が受けられるよう,がん診療連携拠点病院や地域がん診療病院を指定している。しかし,これまで全国規模でのがん患者の精神疾患の診療実態調査は行われておらず,現状は未知であった。

大規模レセプトデータベースを用い,2009~14年に8種のがん(乳房,大腸,肝臓,肺,卵巣,膵臓,前立腺,胃)のいずれかに新規診断された18歳以上の患者1万4661人を対象とした,精神科系薬剤処方の調査研究1)では,約半数がベンゾジアゼピン系薬剤を処方されていたが,がん診療連携拠点病院では一般病院よりも処方が少ない傾向がみられた。処方時期はがん診断後1カ月以内が最も多く,処方に影響する因子は化学療法,外科療法,肺癌,性別(女性)や併存疾患であった。

一般病院と精神科専門医が必ずいるがん診療連携拠点病院とで,治療方針や薬剤選択に差がある可能性がある。各専門家との連携を含め,がん種や性別,併存疾患も考慮した精神的ケアの検討が今後必要であろう。

【文献】

1) Sato I, et al:Psychooncology. 2018;27(2):450-7.

【解説】

佐藤泉美 京都大学薬剤疫学

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