日本医師会と東京都医師会は29日、2020年東京五輪のマラソンの競技開始時刻について、選手や観客の熱中症リスクを軽減するため、現在予定されている午前7時から1時間半繰り上げ、5時半とすることを大会組織委員会に要望した。競歩の競技時間の変更も提言した。
要望は、実際の競技コースの暑さ指数(WBGT)を昨夏と今夏に計測した中京大の松本孝朗教授(環境生理学)の研究に基づくもの。日医の長島公之常任理事は31日の会見で、要望書を受け取った組織委の森喜朗会長から「医学に基づくデータは貴重でありがたい。国際オリンピック委員会(IOC)、国際陸上競技連盟に情報共有する」との反応があったことを報告。今後、小池百合子都知事、桜田義孝五輪担当相にも要望を行っていくとした。
研究によると、マラソンを7時に開始した場合、選手は30km地点以降、WBGTが31℃以上(運動中止)または28~31℃(厳重警戒)を指す中を走り続けることになり、熱中症リスクが極めて高くなる。沿道のスタッフと観客も運動中止レベルの環境に1時間以上曝露されると予測された。5時半開始の場合、競技終了まで環境はWBGTが25~28℃(警戒)の範囲に収まり、選手、観客・スタッフともに熱中症リスクの低減が期待できるとしている。
競歩の開始時刻(50km:6時、20km:7時)については、①20km、50kmともに18時半開始、②50kmは3時半、20kmは6時開始、③コース上に日射を遮る天幕を設置して現行通り―の3つの変更案を提示。①または③が「現実的な提案」(長島氏)だという。