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学会レポート─2018年欧州高血圧学会(ESH 2018)[J-CLEAR通信(94)]

No.4921 (2018年08月18日発行) P.49

宇津貴史 (医学リポーター/J-CLEAR会員)

登録日: 2018-08-16

最終更新日: 2018-08-14

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2018年6月8日から4日間にわたり,フィラ・バルセロナ・グラン・ビア(スペイン)において,欧州高血圧学会(ESH)の第28回学術集会が開催された。本年の学術集会には67カ国から1145報(わが国からは52報)の投稿があり,1041報(うち口演発表は178報)が報告された。新ガイドライン公表にもかかわらず,例年に比べ,活気に欠けていたのは否めない。また企業展示に製薬会社のブースが2つだけ(1つはジェネリック会社)という点も目を引いた。

1 腎動脈内アブレーションによる降圧効果は施行前心拍数に影響を受ける可能性も:SPYRAL HTN-OFF MED後付解析

今回のESHでは,腎動脈内アブレーション(腎デナベーション)に関する報告を数多く目にした。

まず,2017年の欧州心臓病学会(ESC)で報告された“SPYRAL HTN-OFF MED”試験1)のサブ解析である。低心拍数例では降圧効果が減弱する可能性が示された。Michael Böhm氏(ザールラント大学,ドイツ)が報告した。

同試験の対象は,3~4週間降圧薬中止後,自由行動下24時間収縮期血圧(SBP)が「140~<170 mmHg」かつ,診療室SBP「150~<180mmHg」,診療室拡張期血圧(DBP)「≧90mmHg」だった80例である。平均年齢は55歳弱,降圧薬中止後の24時間血圧平均値はおよそ150/100mmHg,診療室血圧は約160/100mmHgである。

これら80例は,腎動脈内アブレーション群(38例)と偽手技群(42例)にランダム化された。患者と血圧評価者には,いずれの群に割り付けられているか知らされていない。その結果,1次評価項目である「3カ月後の24時間平均血圧」は,アブレーション群で偽手技群に比べ「5.5/4.8mmHg」の有意(P=0.04/0.002)低値となった。

今回報告されたのは,心拍数に関する後付解析である。観察開始時の心拍数の高低により,アブレーションによる降圧効果に差が認められた。すなわち,24時間測定中央値である「73.5拍/分」「未満」例では「以上」例とは対照的に,24時間,昼間,夜間いずれの平均SBP/DBPも,偽手技群と有意差を認めなかった。特に「早朝」SBP平均値は,有意とはならないもののアブレーション群で10.4mmHgの高値となっていた(P=0.33)。

なお,「早朝」(7~8時),「昼間」(9~21時),「夜間」(1~6時)の3つの時間帯にわけて比較すると,アブレーション群で心拍数平均値が有意に低値となっていたのは「早朝」(-2.0 vs.-0.3拍/分)と「昼間」(-5.8 vs.-1.1拍/分)であり,「夜間」(-1.9 vs. 0.1拍/分)では有意差を認めなかった。

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