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グリーフケア

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-11
蘆野吉和 (北斗地域包括ケア推進センターセンター長)
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  • ■考え方

    看取りを伴う在宅医療(在宅緩和ケア)は,死後の家族へのグリーフケアを含む一連のケアである。このグリーフケアとして医療者が対応すべき重要なケアが,臨終期を含む死亡前後における家族のケアである。

    ■グリーフケアとは

    グリーフ(悲嘆)とは,死別による喪失から生じる強い感情ないし情緒的な苦しみである。その苦しみの感情表出の仕方は,ショック,悲しみ,怒り,混乱,信じられない気持ち,罪悪感と自責,不安,孤独感,無力感などがあり,しばしば身体的症状や行動変容および認知変容(思考・判断力の低下,集中力の低下など)を伴う。

    この悲嘆の状態は時間とともに変化し(悲嘆のプロセス),正常の状況に戻っていく。そして,この過程は死別した人との関係性でつくりあげてきたこれまでの世界から,故人のいない環境での新しい関係性や役割,そして生き方を構築する過程であり,また"死者"としての故人と新しい絆を保つ過程であるとも言われている。この過程をグリーフワーク(悲嘆の仕事)と呼び,誰もが体験し,乗り越えなければならない仕事であり,人生の成長過程の大事な仕事でもある。そして,このグリーフワークを支え,見守るのがグリーフケアである。

    ■正常の悲嘆・病的悲嘆

    悲嘆のプロセスは通常,死別から1~2年と言われているが,様々な要因により大幅な個人差と多様性がみられる。

    グリーフワークが正常に行われず,悲嘆が長期化したり,悲嘆の感情が非常に強度となり合併症状を引き起こしたり,心理的・社会的機能が低下して人生を前向きに歩めなくなったり,うつ病あるいはその他の精神疾患に移行したりする場合が10~20%あり,これを病的悲嘆と呼んでいる。

    正常な悲嘆のプロセスを可能な限り円滑にすませ,病的悲嘆への移行を防ぐには,悲嘆に影響する要因を死別前にできる限り少なくすると同時にリスク評価を行い,問題となりそうな要因に死別前あるいは死別後に対応する体制をつくることが重要である。

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