株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

転倒・骨折

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
太田秀樹 (医療法人アスムス理事長)
    • 1
    • 2
  • next
  • ■疾患メモ

    骨折によって在宅医療が中断されることは決して稀ではない。在宅医療の対象となる通院困難者は,実用性のある歩行困難な症例とみなしてよい。

    介護予防(寝たきり予防)として転倒防止の重要性が叫ばれているが,転倒によらなくとも,車いすからベッドやトイレへの移乗に失敗してずり落ちた程度で容易に骨折を生じている。介助者が愛護的に移乗を支えた場合でも,胸郭に無理な力がかかり肋骨骨折が生じたり,オムツ交換で大腿骨骨折が生じたりすることもある。非常に軽微な外力によって簡単に骨折が生じるのである。

    要介護状態となっている虚弱な高齢者の骨折は,いわゆる病的骨折とみなした治療方針を検討するとよい。本来であれば観血的治療の適応であっても,標準的治療を選択しないで保存的加療を行ったほうが予後の良いこともしばしば経験している。したがって,在宅医療を継続しながら保存的に骨折治療を行う意義は大きいと考えられる。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    虚弱な高齢者に多い骨折として,大腿骨頸部骨折(いわゆる内側型と転子部骨折),手関節部骨折(コーレス骨折 Colles'fracture,スミス骨折 Smith's fracture),上腕骨近位端骨折(外科頸*骨折など),脊椎骨圧迫骨折,がある。

    *:外科頸とは解剖学的頸部ではないことからこのように言われる。外顆と誤記に注意

    【検査所見】

    X線:骨折線が確認できる。

    骨折線を確認できない場合は,軟部組織の腫脹が重要な所見となる。

    受傷直後に診断に苦慮する場合には,1~2週間後に再度撮影する。骨萎縮が進行し,診断しやすくなる。

    ■治療の考え方

    解剖学的整復位にとらわれず,疼痛を軽減させることを目的とする。

    機能的良肢位への理解も重要である。

    偽関節を形成したとしても,受傷前のADLが低下しなければ治療には成功したと考える。

    ■アセスメントのポイント

    誘因となる外傷の既往がはっきりしないこともあり,非常に軽微な力で生じる。

    疼痛を訴え,局所に腫脹や圧痛がある(Malgaigne骨折痛)。健側と比較して疼痛,腫脹が著明な場合は骨折を疑うとよい。

    大腿骨頸部骨折内側型は,仮に歩行が可能でも骨折を否定する根拠にはならない。骨折があっても歩行が可能な場合があるので注意を要する。

    胸腰椎移行部の圧迫骨折は,尻餅をついて生じることが多い。

    原因不明なサチュレーションの低下は,骨折による脂肪塞栓症候群を疑う。認知症が重度の場合は外傷の既往を確認できないので注意を要する。

    脊椎圧迫骨折は,専門医であっても受傷直後の単純X線検査で診断することが難しい。背腰部痛が持続する場合は1~2週間後に再度X線撮影し,圧潰が始まると診断が容易となる。

    1190疾患を網羅した最新版
    1252専門家による 私の治療 2021-22年度版 好評発売中


    PDF版(本体7,000円+税)の詳細・ご購入は
    コチラより

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    page top