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パーキンソン症候群(薬剤性を含む)

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-06-13
王子 悠 (順天堂大学医学部脳神経内科)
石垣泰則 (城西神経内科クリニック理事長)
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  • ■疾患メモ

    パーキンソン症候群(Parkinson's syndrome)は,特発性パーキンソン病,二次性パーキンソニズム,症候性パーキンソニズムに大別される。治療法や予後は疾患により異なるため鑑別診断が重要である。

    在宅では進行期のパーキンソニズムが対象となることが多いが,主症状のほかに様々な合併症が問題となるためケアが困難になることがある。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】(

    02_03_パーキンソン症候群(薬剤性含)

    特発性パーキンソン病は長期進行例が多い。

    二次性パーキンソニズム(多系統萎縮症,進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症など)はレボドパに対する反応性が乏しく,特発性パーキンソン病と比べて進行速度が速く,寝たきりとなることが多い。そのため発症からわずか数年で通院困難となり,往診開始となる例もある。また,転倒による骨折の頻度が多い。嚥下障害や認知症の合併例では経口摂取が困難となり,発症から数年で経管栄養が必要となる例も多い。

    特発性パーキンソン病と二次性パーキンソニズムは中枢神経の神経変性が主体であるが,症候性パーキンソニズムでは必ずしも神経変性によらない原因により発症する。薬剤性,中毒性,代謝性,血管性,脳炎後,脳腫瘍,特発性正常圧水頭症などが挙げられるが,病態によっては原因疾患の治療により症状改善が得られる場合があるため見逃さないことが重要である。在宅で遭遇しやすいのは薬剤性と思われるが,薬剤性パーキンソニズムをきたす原因薬剤は多領域にわたるため,患者の使用薬剤を常に把握しパーキンソニズムの原因となっていないかを検討することが重要である。

    【検査所見】

    特発性パーキンソン病と,それ以外のパーキンソニズムの鑑別診断が重要である。鑑別診断には頭部CT・MRIのほかに,脳SPECT検査やMIBG心筋シンチグラフィーなどを用いるが,判別が困難である場合が多い。専門医の意見を求めることが望ましい。

    ■治療の考え方

    特発性パーキンソン病はレボドパが有効であるため在宅での中心的治療となる。

    二次性パーキンソニズムにおいてはレボドパが無効であり,根本的な治療がないため対症療法とケアが中心となる。頻回の転倒,誤嚥性肺炎,呼吸中枢障害,著しい調節障害,尿閉による尿路感染症など様々な合併症の予防および対処が必要になる。

    症候性パーキンソニズムは原因により治療法が異なる。薬剤性では原因薬剤の中止のみで症状改善が期待できるため,在宅で新たにパーキンソン症状に遭遇した場合にも薬剤性の可能性は常に考える必要がある。

    ■アセスメントのポイント

    ここでは二次性パーキンソニズムを中心に説明する。

    【パーキンソニズムによる運動症状の評価】

    残念ながら症状を改善させる有効な治療法がない。パーキンソン症状の進行により移動能力の低下が著しくなるため,進行の状況に合わせて移動形態の適切なアドバイスが必要となる。心身の障害の程度ではなく,生活機能を評価することが重要である。可能であれば専門医による定期的な診察を受けることが望ましい。

    【合併症の評価】

    進行例では一般に嚥下障害を合併しやすくなるため,誤嚥の予防に努める。誤嚥を繰り返し経口摂取が困難な場合には胃瘻が必要となる。

    多系統萎縮症は様々な合併症を起こしやすい。

    膀胱機能障害は尿閉から尿路感染症を起こす可能性があり,膀胱バルーンや自己導尿が必要になる。

    便秘に対しては下剤や浣腸を使用して排便コントロールを行うが,困難な場合が多い。

    起立性低血圧により失神を繰り返すこともある。

    一部には声帯麻痺を起こし突然死のリスクがあり,気道狭窄の徴候がみられたら気管切開についても説明と意思確認を行う必要がある。

    コミュニケーション機能を評価し,経口摂取の可能性を検討し,QOLを最大限に尊重し治療法を選択する。

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