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歩行障害・運動失調

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  • ■緊急時の処置

    脳血管障害や脊髄損傷症例では,呼吸・循環動態の把握と管理を行う。外傷症例では,確実な止血と固定に努める。

    骨折や筋挫傷,脊椎疾患による急性圧迫性脊髄障害に起因する歩行障害と考えられる場合には,整形外科医にコンサルトする。脳血管障害による歩行障害では,t-PAによる血栓溶解療法が適応となる場合もあるので,すぐに神経内科や脳神経外科にコンサルトする。

    歩行障害や失調による転倒防止に留意する。

    ■検査および鑑別診断のポイント

    高齢者では,多くの既往歴のため主訴や病歴が錯綜し,経過や所見が複雑化していることがあるので,丁寧な聴取により実態を把握する必要がある。若年者では,多発性硬化症やミトコンドリア病などの稀な疾患も考えて,MRIなどの画像検査,SPECT・シンチグラフィーなどの核医学検査,神経電気生理学的検査,代謝・内分泌・免疫学的検査,腫瘍マーカー,遺伝子検査などを進める。

    【血液検査】

    基礎疾患や潜在的異常の把握に重要である。筋疾患では血清CPK,ミトコンドリア脳筋症では血清および髄液の乳酸・ピルビン酸値,重症筋無力症では抗アセチルコリン受容体抗体,末梢神経障害ではビタミンB1,B6,B12や抗核抗体,脊髄障害ではHTLV-1抗体などを測定する。

    【画像】

    CT・MRI:脳血管障害,脊椎症,変性疾患の診断に有用である。

    【その他】

    脳波:てんかんや脳脊髄炎の診断に有用である。

    筋電図:神経筋疾患,末梢神経障害の診断で有用である。

    髄液検査:感染症,脱髄疾患の診断に有用である。

    ■落とし穴・禁忌事項

    日単位で急速に進行する歩行障害や運動失調を呈してきた患者では,脳・脊髄血管障害,ギラン・バレー症候群,脳炎・脊髄炎などを考えなければならない。帰宅させずに入院させて呼吸・循環管理をしっかり行い,精査する必要がある。

    ■その後の対応

    筋力トレーニングや平衡感覚訓練は自宅でも可能なので,定期的な介護職員の訪問により運動計画を進めるとよい。

    ■文献・参考資料

    【文献】

    1) 佐藤健太, 訳:ハリソン内科学. 第4版. 福井次矢, 他, 監訳. メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2013, p162-7.

    2) 水澤英洋, 訳:ハリソン内科学. 第4版. 福井次矢, 他, 監訳. メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2013, p2889-96.

    3) 中野今治:今日の診断指針. 第7版. 金澤一郎, 他, 編. 医学書院, 2015, p264-7.

    4) 望月仁志:今日の診断指針. 第7版. 金澤一郎, 他, 編. 医学書院, 2015, p277-9.

    【執筆者】山下雅知(帝京大学ちば総合医療センターERセンター長・教授)

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