【質問者】
天野耕作 東京女子医科大学脳神経外科講師
頭部外傷後の抗てんかん薬投与の期間を考える際には,受傷から発作発現までの時間を参考にします。外傷後の発作を最も起こしやすい受傷後24時間以内の「超早期てんかん」や1週間以内の「早期てんかん」であれば,てんかんとしての長期的治療は必要とせず,ごく一時的な抗てんかん薬の投与でよいことになります。なぜなら,早期の発作は,受傷後の浮腫や血腫,外傷時のサイトカインなどが原因だからです。
しかし,一定の潜伏期を経てから発症する「晩期てんかん」は,挫滅組織に遺伝子発現が誘導され,イオンチャネルなど構造変化をきたした結果,異常な神経ネットワークが形成され,病態としてのてんかんを獲得したということで,長期的な抗てんかん薬投与を考えなくてはならなくなります。
最近の統計において,リハビリテーションを要するような重度頭部外傷後では,10%程度がこの「晩期てんかん」を発症しているとされ,外傷後てんかんが長期的に問題となる頻度は少なくないということが改めてわかります。
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