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旬はどのように来るのか[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.100

金澤 右 (岡山大学病院病院長)

登録日: 2018-01-06

最終更新日: 2017-12-22

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2017年の楽天オープンテニスは、錦織 圭選手がけがのため出場せず、杉田祐一選手の活躍が注目された。彼は既に29歳だが、この1年間で頭角を現し、ATP世界ランキング40位前後まで上昇してきた。ラケットやシューズの改良、体調管理の向上によりテニス選手の選手寿命が延びてきていることは間違いないが、ランキング100位以内に入っていなかった小柄な選手が、29歳にしてこのようにランキングを上げてくるのは大変珍しい。果たして彼はどのように進化を遂げたのか、興味のあるところである。

同じスポーツの世界で、J1の鹿島アントラーズ、J2のファジアーノ岡山で活躍した元サッカー日本代表の岩政大樹選手が『ピッチレベル』(ベストセラーズ刊)という本を出版し、注目を集めている。本書で彼が繰り返し述べているが、彼自身は背が高いものの、決して才能や体力に恵まれた選手ではなく、少年時代も目立った選手ではなかった。山口県の島育ちで、両親のように教員になろうと思い東京学芸大学に進学し、結果としてプロサッカーの世界に入ったが、当初はまったくそのレベルについていけずに悩みぬく。しかし、人並み外れた負けん気と深い思考力でサッカーを分析し、20歳代後半になって日本代表選手に名前を連ね、35歳までJリーガーとして活躍した。

杉田選手と岩政選手、この2人の選手には共通点がある。2人ともその世界での才能が傑出しているわけではない。もちろん、負けん気や考える力は人並みならぬものがあると思うのだが、遅咲きで、いつの間にかトップ選手になっているということが同じだ。これは彼らからすると、恐らく自らが成長したというより、経験を重ねながら、結果として相対的に同世代よりは上にいた、という感覚ではないかと思う。違う見方をすると、才能に恵まれた同世代が先に頂点を迎え下り坂となる中で、彼らはゆっくりと成長し、あるいは下ることなくプロとしてのキャリアを着実に歩んできたということではないだろうか。人生の旬はどのように来るのだろうか。2人の遅咲きのアスリートに共感することは多い。

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