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AI(人工知能)と医療[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.94

尼崎賢一 (三井記念病院脳神経外科科長)

登録日: 2018-01-06

最終更新日: 2017-12-22

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以前のことであるが、手術前の患者との面談で、「人間が人間を治療する限り100%の手術はないのではないでしょうか。たとえば、人間より高次な生き物があって、それが治療にあたるのであれば確率は上がるのかもしれません」というような話をしたことがある。

さて、最近話題のAI(人工知能)である。面談内容はAIをイメージしていたわけではあるまいが、昨今のAIの躍進を見聞していると「人間より高次な」という部分は該当するようにも感じる。医療への参入も始まった。AIのみならず、手術支援のナビゲーション、シミュレーション、分野によってはロボットも手術治療に参入する時代、何しろテクノロジーの進歩は凄まじい。

翻って、我々はAIとうまく付き合っていけるのであろうか。たとえば、AIがあれば、患者のパラメータを入力すれば超大なデータと最新のガイドラインから瞬時に最善の治療を選択する、くらいのことはしてくれそうなものである。「病院に1台AI」なんていう時代も近いのかもしれない。そしてAIがあれば、緊急で治療を要する患者が来院した場合、こんな面談になったりするのだろうか。

「AIによりますと、貴方の治療選択はこちらのパッドに示してある通りで、上からお勧めの順、つまり、現在の治療ガイドラインに沿って治療効果が高い順にリストアップされています。それぞれの治療をタップすると合併症の可能性や治療対費用効果などについても見ることができます。我々もAIの治療方針に異存はありません。最終的にご希望の治療番号の決定ボタンをタップされますと、治療に同意したとみなされ、自動的に電子カルテに治療プロトコールが送信され、適切なタイミングで治療が開始されます。同意文書をご希望であれば、印刷ボタンを押して頂ければお持ち頂くことが可能です。それではお返事をお待ちいたします」。ここまで無機質になってしまうことはないのかもしれないが、いろいろな局面でAIが介入してくる時代は近い、と思う今日この頃である。

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