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誤嚥性肺炎は治る[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.79

武久洋三 (日本慢性期医療協会会長)

登録日: 2018-01-05

最終更新日: 2017-12-21

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人間はいつかは死ぬ。その死亡原因は時代とともに大きな変化を見せている。結核などの感染症の時代から、脳血管障害や心疾患、悪性新生物と目まぐるしく、直接死因順位の変遷はまさに時代を映す鏡でもある。がんの治療の進歩による生存期間の延長により、国民の2人に1人ががんになっても、がんによる死亡が3人に1人にとどまっている。近代医学は確実に平均余命を延ばしている。

そのような時代の変化に伴って、近年急速に死亡原因として増加してきたのが肺炎である。いろいろな疾病にかかりながらも何とか生き延びてきた人たちは、高齢による様々な臓器の機能低下の結果、仮性球麻痺や嚥下障害を合併することが多くなっていることも事実である。嚥下障害による誤嚥は誤嚥性肺炎を引き起こし、治療の甲斐なく死亡してゆくことが多いのである。これは異常な問題として注目されている。

昨年4月に、なんと誤嚥性肺炎は治らないから治療しない、という選択肢を公的に確立された例として、日本呼吸器学会から発表されたときには、私は飛び上がって驚いた。肺結核が不治の病として恐れられていた時代から、人類は感染症と闘ってきた。その結果として、感染症は治療可能な疾患としての認識が定着している。そのような現在、呼吸器の専門である学術団体が、誤嚥性肺炎に降参したと思われるような発表があったので、私は改めて自分の病院での肺炎の治療についてデータを収集してみた。

慢性期医療の現場では、誤嚥性肺炎になるまでに、低栄養や脱水、貧血、電解質異常、高血糖などの身体状況の異常が跳び箱のように重なった結果として、仮性球麻痺や誤嚥性肺炎が起こっている、ということは、カルテの分析により明らかであった。したがって、私たちの常識としては、誤嚥性肺炎は抗菌薬などで治療するだけでなく、土台となっている障害を一つずつ取り除くことを同時に行っている。その結果として、当院での誤嚥性肺炎の死亡率は平均年齢85歳を超えているにもかかわらず、死亡率は常に10%以下である。同じ患者が複数回罹患することも多いが、それらすべて含めて誤嚥性肺炎は治療可能な疾病である、という結果が出ている。何よりも全身管理・全身治療・嚥下リハビリが前提となることは当然である。

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