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ドナルド・マクドナルド・ハウスと小児がん医療の現場[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.73

若林俊彦 (名古屋大学大学院医学系研究科脳神経外科学教室教授)

登録日: 2018-01-05

最終更新日: 2017-12-21

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名古屋大学医学部附属病院に、患児の治療に付き添う家族のための滞在施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス」が設置されてから4年が経過した。名大病院は、小児難治性疾患(血液がん、脳腫瘍等)の治療に対応する「最後の砦」として、愛知県はもとより県外の病院からも紹介されるケースが多々あり、海外からの利用者も多い。

難治性疾患は治療期間が長期化する傾向にあり、患児の多くは長い入院生活を強いられる。小児病棟では、全体の40%以上の子どもが6カ月以上の入院期間が必要で、中には2~3年という子どもも少なくない。こうした状況下、家族は患児をサポートするため、様々なハードルを乗り越えていかなければならない。不安定になる精神状態、自宅と病院の往復、昼夜を問わない付き添い、サポートするがゆえ離ればなれになる家族。精神的にも身体的にも疲労を蓄積させるほか、治療費や遠方からの交通費など、家族には経済的な負担も重くのしかかる。

こうした家族に対して、病院内には家族向けの宿泊施設はない。そのため、夜になると子どものベッドの下に細長い硬いマットを敷いて病室に寝泊りする方や、昼間、子どもが院内学級に出席しているとき、ベッドを間借りして仮眠をとる方、大きなストレスを抱えながらも一時も離れず、子どもに付き添う親御さんたちが多数みえる。病気と向き合う方々に元気になってもらうことが、我々の絶対なる使命であるにもかかわらず、目の前で日に日に憔悴されていく家族を放っておく訳にはいかない。

くる日もくる日も、親御さんには元気な笑顔で子どもと接して頂くため、「寝るときくらいゆっくりして欲しい」という気持ちを込めて、お子さんの治療に付き添うご家族のための滞在施設「マクドナルド・ハウス」を誘致した。

そのコンセプトは、“HOME AWAY FROM HOME”、すなわち、わが家のようにくつろげる「第2のわが家」である。このハウスの存在は、まだ日本での知名度は低いが、公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパンが設置し、運営を支援している。

しかし、支援と言ってもハウスの運営そのものは地域ボランティアの方々に支えられている。また、設備のほとんどは、ハウスの理念に賛同して頂いた企業の無償提供で成り立っている。多くの方々の善意と協力に支えられているこのハウスでの活動が、日本中に善意のネットとして広がっていくことを願ってやまない。

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