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近未来医療のもたらすもの─医療とAIとロボット[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.72

田邉一成 (東京女子医科大学病院病院長、泌尿器科教授)

登録日: 2018-01-05

最終更新日: 2017-12-21

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医学の進歩には目を見張るものがあるが、近年のそれはほとんど驚異的であるとさえ言えると思う。

私が医師になった30年前は、英文の論文を投稿して実際雑誌に掲載されるまでに1年以上の時間がかかったのであるが、今や論文の原稿をメールで送付すると、早ければ数カ月前後でオンライン発表されてしまうのである。これだけ見ても、以前では考えられないような速さで情報が拡散し、次の研究へと進んでいくことがわかる。かつて、紙ベースの情報伝達からメールに変わったとき、時間の余裕ができて、ゆっくりと仕事ができるであろうと考えたのであるが、実態はまったく逆で、メールによって短時間に1つの仕事が終わるとすぐに次の仕事が始まる。メールが発達して時間ができるどころか、極端に忙しくなったことを思い出す。

私たちのようにアナログで物心つき、30歳代でデジタル化の波にさらされた世代は、この違いをよく実感できるのではないか、と思っている。情報伝達の速さは単なる速さだけではなく、事象の質を根本から変えていくように思われる。

工業製品、情報機器、薬品、医療技術などの劇的な進歩は、人の日常を大きく変えている。人々の平均寿命はこの50年の間に大きく伸びており、今や70歳代はかつての50歳代に等しい感じになっている。人体の生理がこんな短期間で進歩することなどありえないことで、医療技術、医療レベル、薬品などの急速な進歩がその原動力になっていることは明らかである。

私が専門とする泌尿器科の分野でも医療技術の進歩は著しく、ここ10年で開発された手術用ロボットは泌尿器科手術のほぼすべてをカバーできるようになり、この技術の導入は泌尿器科臨床の質をも大きく変えつつある。ロボット手術では、術後の回復がきわめて早いため術後管理が極端に簡素化され、術後輸液もかつての開腹手術に比べて1/5ぐらいに減少している。

外科医の減少が臨床に大きな影響を及ぼす可能性について議論されているが、私が見る限り、泌尿器科医はかつてほどの人数がいなくても、十分これまで以上の症例を手術できると思っている。すなわち、情報伝達技術の進歩が急速に機器の進歩を進め、その結果、医療の現場の質、考え方、実務などを大きく変えつつあるのである。

今後の医療の世界は、AIなどの導入により医師の仕事もAIが行うようになることが予想され、想定外の急激なイノベーションが進むものと思われる。

このような状況で私たちは日常臨床をどのように考えていけばいいのか、戸惑うことも多くなるのかもしれない。常に「今日の常識は明日の常識ではない」というスタンスが必要であり、改善、改革を基本として、日常臨床に臨む姿勢がますます必要になると考えている。5年ぐらい前までは、1年を振り返って自分の臨床が5%進歩していたら合格、5%の進歩が見られなかったら努力が足りない、と指導していたが、今や年間の進歩が30%をめざすべき、と考えている。たとえ、がん末期と考えられる患者さんであっても、3カ月後に出てくる新技術、新薬がこれを救える可能性もありうる時代でもある。

常に、希望を捨てることなく前向きに臨床に向かうことが最も大切であると感じている。

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