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患者家族の想いに寄り添って[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.43

玉井 浩 (大阪医科大学小児科教授)

登録日: 2018-01-03

最終更新日: 2017-12-21

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平成29年6月に大阪で第59回日本小児神経学会学術集会を開催した際、大会期間真っ只中の第2日目に、1200名収容できる大会場で市民公開講座を朝から夕方まで行うという異例の企画を行った。会場には市民350名を含めて約700名の聴衆が参加した。

テーマはダウン症をめぐる話題であり、周産期医療と生命倫理についての基調講演に始まり、米国の素晴らしいダウン症診療システムについての特別講演、療育、学校教育、認知特性、退行、老化といった問題についての3つのシンポジウムが続いた。母体血胎児染色体検査(non-invasive prenatal test)の登場以来、ダウン症という染色体疾患への関心が高まっているが、メディアに登場するのは検査対象であるトリソミーという疾患の説明ばかりであり、学校や家庭、社会生活上どのような状況にあるのかについての報道もなく、一般市民にとってダウン症は不可解な「よくわからない」存在のままである。しかし、様々な相談を受ける医師たちは、医療面にとどまらず、家庭や学校での状況についてもその実態をしっかりと知っていなければならない。医師からの不用意な一言で、絶望したり、深く悲しんだりするが、逆に医療者がそういった生活面にも関心を持っていること、研究がそこまで進んでいるということを家族が知ることは、大きな喜びと安心をもたらすこともある。

そのような思いで開催した市民公開講座だったが、研究者と家族がともに学ぶことができ、非常に多くの方から高評価を頂いた。会員懇親会では、ダウン症者による見事なダンスパフォーマンスやピアノ演奏、スピーチがあり、医師と言えども知らなかった才能に、会場は驚きの連続であった。医師に求められるのは、決して医療面だけではなく、背景にある生活面、家庭や学校などでの生活にも寄り添ったものであることが改めてわかった1日であった。

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