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超高齢化に立ち向かうアジアからのリバースイノベーション[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.31

佐々木 淳 (悠翔会理事長・診療部長)

登録日: 2018-01-02

最終更新日: 2017-12-20

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日本は高齢先進国であると言われている。しかし、日本の高齢者医療やケアは本当に進んでいるのだろうか。最近、北京の高齢者ケアの現場を視察する機会があり、そんなことを考えさせられた。

中国は自由経済の仕組みの中で、公的支援に依存しない高齢者ケアに取り組みはじめている。現状、全額自己負担のサービスが大部分なので、高品質なケアを受けられるのは富裕層が中心である。しかし、富裕層向けのリソースの一部を配食や訪問介護とシェアすることで地域の高齢者をサポートする、ボランティア・利用者間の助け合いを活用し持続可能な地域ケアの仕組みをつくるなど、コミュニティーごとの創意工夫で機能的な地域包括ケアシステムが実践されつつある。

「日本の介護は守られている」。ある経営者の言葉がとても印象的だった。日本には介護保険という素晴らしい仕組みがある。在宅医療も保険診療でカバーされ、地域には多くの優れた専門職や社会的リソースがある。中国に比べればきわめて恵まれた環境だ。しかし、未来に向けての地域の仕組みづくりがなかなか進まないのはなぜなのだろうか?

日式介護という言葉がある。日本の先進的な介護を取り入れようという意欲的なアジアの事業者も多い。確かに、ケアの技術やプロダクトにおいては、日本はまだ少し先にいる。しかし、日本が介護保険というぬるま湯に浸かっているうちに、彼らはより現実的な仕組みを創り出していくのだろう。日本の保険制度が破綻したとき、日本の医療やケアはアジアの事業者によって担われることになるのかもしれない。

財源も人材も逼迫した超高齢社会を持続可能なものにするためのヒントは、制度の未整備な国々でのトライアルにこそあるのかもしれない。日式を輸出する、海外から介護人材を招聘するのもよいが、アジアの取り組みに真摯に学ぶ、そして超高齢社会を乗り切るための知恵を一緒に出し合う、そんな謙虚な姿勢が必要なのではないか。制度の不備をものともせずにポジティブに挑戦し続けるアジアの仲間と出会うたびに、そんなことを思う。

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