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医師となって50年[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.24

山口 徹 (虎の門病院顧問)

登録日: 2018-01-02

最終更新日: 2017-12-20

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今年は医師免許を手にして50年目の年である。私の学年はインターン制度の最後の学年だったので、昨年が医学部卒業後50年、今年が医師になって50年ということになる。実際には、春の国家試験をボイコットしたので、医師免許を手にしたのは12月だったのだが。昨年の卒後50年目の同窓会では、記念に何かしたいという話が持ち上がり、「我々は、回復の見込みのない状態となったときには、無意味な延命処置を受けるのを謝絶することを宣言する」という意見広告を、賛同者一同の名前で新聞に発してはどうか、という話で盛り上がった。医師の意思表明が効果的な問題提起になる確信はあったが、何千万円も掛かるという現実に話はつぶれた。残念であった。

50年間には50年記念との出会いも少なくなかった。今年は、私が編集長を務めている循環器の和文論文投稿誌「心臓」の50年記念、50巻にあたる年である。記念号として、わが国の循環器診療の50年を振り返る特集を企画したが、自分自身の医師50年の歴史とぴったり重なる偶然に不思議な縁を感ずる。また、虎の門病院病院長時代の2008年には創立50年記念を祝った。その時も、私が総編集として関わっていた医学書院の『今日の治療指針』の50周年記念号の年と重なった。この運の強さを喜んで、黄金色の50周年記念号を病棟、外来へ配ったことを懐かしく思い出す。

異状死問題から医療事故調査に関わって15年以上になるが、50年前には医療事故の発想そのものがなかったと思う。当時は、治療といっても、内科領域では対症療法以上のものはきわめて少なく、ミスがあっても重大な結果を生ずることはなかったのであろう。この50年の医療の進歩は、共に歩んだ者には大いに刺激的であったが、皮肉なことに、この医療の成功、安全の進歩が不成功をあってはならないこと、さらには過失を疑わせる流れになっていったのは残念である。

新しい医療事故調査制度は、その流れを変える可能性を秘めていると考える。医療界自らが取り組む再発防止、医療の質向上への試みと医学・医療の進歩が両立する社会の実現に向けて前進することを期待したい。

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