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パーキンソン症候群の鑑別診断と血中oxDJ-1【血中oxDJ-1はパーキンソン病の新しい診断マーカーとなりうる】

No.4881 (2017年11月11日発行) P.53

西郷和真 (近畿大学理工学部生命科学科ゲノム情報神経学准教授/医学部神経内科兼)

登録日: 2017-11-14

最終更新日: 2017-11-07

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パーキンソン病(PD)は静止時振戦,筋強剛,無動,姿勢反射障害などを呈する疾患であるが,ほかにもPDと類似の症状をきたす複数の疾患があり,「パーキンソン症候群」と言われる。PDと他疾患との鑑別診断が重要であるが,特にPDとパーキンソン症候群を呈する神経変性疾患である進行性核上性麻痺(PSP)や多系統萎縮症(MSA)との鑑別は,しばしば難渋することが多い。両者を鑑別できるバイオマーカーがあれば,臨床的にきわめて有用である。

Saitoらは,遺伝性PDの原因遺伝子のひとつであるDJ-1の遺伝子産物であるDJ-1蛋白に着目し,赤血球内の酸化されたDJ-1蛋白(oxDJ-1)が未治療のPD患者で上昇することを見出した1)。本検査は採血するだけであり,患者の身体的負担は軽微であることもあり,PDの有用なバイオマーカーとなりうると考えられた。そこで筆者らは,Saitoらとの共同研究により,PDとPSPやMSAでoxDJ-1を測定した2)。結果は,PD患者群では165±117 ng/mg proteinであった。一方,PSP群は96±78,MSA群は69±40,コントロール群は66±31であり,PD群とその他の群で有意差を認めた。oxDJ-1測定の結果は,MIBG心筋シンチグラフィーと同程度の診断感度特異度を示した。

今後さらに症例数を蓄積するとともに,対象疾患を増やし,診断的意義を検討する予定である。

【文献】

1) Saito Y, et al:Sci Rep. 2016;6:30793.

2) Yamagishi Y, et al:Neurosci Res. 2017 Jul 10. [Epub ahead of print]

【解説】

西郷和真 近畿大学理工学部生命科学科ゲノム情報 神経学准教授/医学部神経内科兼務

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