中国古典を北方謙三が大胆に再構築し、新たな命を吹き込んだ、壮大な英雄譚。全19巻が集英社文庫より刊行。
北方謙三の「水滸伝」は、とにかく面白い。中国の歴史小説を原典とし、北宋末期の時代背景や108人の英傑が梁山泊に集い国家に反逆する想定は同じだが、その人物像や筋書きは北方流となっている。
英傑の中には軍人や役人、僧もいれば医師、薬剤師、建築・土木技師や料理人、盗賊、間諜もいるが、根底にある連帯感は国を倒して人民のための国家を作るという「志」である。単なる反乱軍ではなく意義ある組織であるためには、リーダーの理念や牽引力、包容力が重要であり、現代の会社経営やチーム医療にもつながる。
腕は立つが暗い過去に悩む若者が、山中で質素に暮らす元武術師範の王進とその賢母のもとで、厳しい武術鍛錬と学問、慈愛に満ちた生活を送り、強く優しい人間として成長していく姿は実にすがすがしい。
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