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外来は「認知症」「小児」「服薬管理」が柱 [2016年度診療報酬改定・詳報]

No.4791 (2016年02月20日発行) P.13

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-27

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中央社会保険医療協議会(田辺国昭会長)の答申を受けて12日に会見した塩崎恭久厚生労働相は、今回の診療報酬改定について、「質が高く効率的な医療を提供できる体制を作ることを大目標にやってきた」と述べた。入院では「重症度に応じて対応していく体制」、外来では「かかりつけ医機能の一層の強化」、調剤では「患者本位の医薬分業」をポイントに挙げた。

認知症地域包括診療加算は30点

今回改定の外来医療の柱は「認知症」「小児」「服薬管理」の3つ。認知症を巡っては、認知症患者に対する主治医機能の評価として「認知症地域包括診療料/加算」を新設(表1)。対象患者は「認知症以外に1以上の疾患を有する」「1処方につき内服薬5種類以下、うち向精神薬3種類以下」の要件を満たす認知症患者で、施設基準は14年度改定で新設された「地域包括診療料/加算」と同じだ。
点数は認知症地域包括診療料が1515点、同加算が30点と地域包括診療料(1503点)/加算(20点)よりも高く設定。認知症患者への対応が喫緊の課題であることに加え、認知症患者への対応は通常よりも手間がかかる点などを踏まえた形となった。
地域包括診療料は「高血圧症、脂質異常症、糖尿病、認知症のうち2疾患以上」を有する患者が対象。つまり、「認知症と高血圧症」「認知症と糖尿病」を有する患者などについて、地域包括診療料/加算と認知症地域包括診療料/加算のいずれを算定するかは医療機関の判断によることになる。
内服薬の要件をクリアできれば認知症地域包括診療料/加算、それ以外は地域包括診療料/加算という流れになりそうだ。11月の中医協で厚労省が示したデータによると高齢者の認知症患者は平均で約6剤処方されており、認知症地域包括診療料/加算を算定するには1剤以上の減薬が必要となる。
また、地域包括診療料/加算、認知症地域包括診療料/加算の施設基準の常勤医師要件について、これまでの「3人以上」から「2人以上」に緩和し、一層の普及を図る。

「小児かかりつけ診療料」新設

小児についてもかかりつけ医機能を推進するため「小児かかりつけ診療料」を新設(表2)。適切な専門医療機関と連携し、同意のある患者について継続的かつ全人的な医療を行うことを総合的に評価する。対象は3歳未満の患者で、①電話など患者からの問い合わせに対する常時対応、②急性疾患やアトピー性皮膚炎、喘息など慢性疾患についての管理、③健診結果の把握と指導を行うこと─などが算定要件となっている。
処方せんを交付する場合は初診時602点、再診時413点、処方せんを交付しない場合は初診時712点、再診時523点をそれぞれ算定する。初診料、再診料と外来診療料の時間外加算など、地域連携小児夜間・休日診療料、院内トリアージ実施料、夜間休日救急搬送医学管理料、診療情報提供料のI・Ⅱ、往診料とその加算─以外は包括評価となる。
また、施設基準として、①小児科外来診療料の届出、②時間外対応加算1または2の届出、③小児科または小児外科の専任常勤医師の配置─に加え、「初期小児救急への参加」「乳幼児健診の実施」「定期接種の実施」「小児に対する在宅医療の提供」「幼稚園の園医または保育所の嘱託医への就任」のいずれか3つ以上を満たす必要がある。

2種類以上の減薬を評価

服薬管理では、6種類以上の内服薬を処方されている患者について、処方内容を総合的に評価し、2種類以上減少した場合の評価として「薬剤総合評価調整管理料」を新設する。同管理料は外来や在宅の患者について、向精神薬など高齢者の処方薬剤を減らすことが狙いで250点を月1回算定できる。
入院患者について同様に2種類以上減少した場合は「薬剤総合評価調整加算」として退院時に250点を算定する。
「連携管理加算」は別の保険医療機関、保険薬局に照会や情報提供を行った場合、50点を算定する。ただし、同加算を算定した同一日においては、同一の別の保険医療機関に対して「診療情報提供料(Ⅰ)」は算定できない。

重症患者割合「25%以上」は高いか

入院医療の柱は今回も7対1の要件厳格化だ。一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」の項目をより急性期に相応しい内容に見直し(表3)、その上で基準を満たす重症患者割合を「25%以上」に引き上げる。ただし、病床規模200床未満の病院については2年間の経過措置として「23%以上」が施設基準となる。項目見直しにより「外科が有利」との指摘を受け追加されたC項目の「救命等にかかる内科的治療」が、どの治療を対象とするのかについては今後通知などで明らかとなる。
この基準が妥当かどうかは判断が分かれるところだろう。中医協の議論では、診療側委員が「20%台前半」、支払側委員が「25%よりできるだけ高く」と求めていた。
しかし、病院団体が指摘するように中小病院では「23%以上」を満たすことが難しいケースもあることから、7対1の一定数は10対1への移行の検討を迫られる。一方で看護師の削減は難しいことに加え、全一般病棟が7対1から10対1に切り替われば大きな減収になるため、「7対1死守」の動きが強まる可能性も指摘されている。こうした状況を踏まえ、3月31日時点で7対1を届け出ている病院については、経過措置として「病棟群単位」で入院基本料の届出を認めることとした。10対1への移行促進が狙いだが、「新たな届出は1回限り」「原則転棟ができない」「17年4月以降、7対1は病床数の60%以下」などの要件を満たす必要があり、実際にどれだけの効果があるかは未知数といえる。

在宅は重症度、居住場所などで評価

在宅医療では、前回改定で「同一日同一建物」の場合が大幅に引き下げられた在宅時医学総合管理料と特定施設入居時等医学総合管理料の評価を細分化(表4)する。
前回改定の見直しにより、①減額対象の「同一日」を避けるため訪問日を調整する、②高齢者向け集合住宅を中心に在宅医療を行う医療機関では軽症患者が多い、③在宅時医学総合管理料などを算定するため月2回の訪問が多い─などの影響が見られたことが中医協でも問題視されていた。

そこで訪問回数を、①月2回(重症度が高い患者)、②月2回以上、③月1回、診療人数についても、①1人、②2~9人、③10人以上─に区分。患者の重症度や居住場所に応じた評価とする。「同一日」かどうかは問わず、「単一建物」の診療人数により評価が変わる仕組みだ。

このほか、在宅医療を専門に実施する診療所の開設を認める。ただし、開設には、在宅医療を提供する地域をあらかじめ規定した上で、「診療地域内に2カ所以上の協力医療機関を確保または地域医師会から協力の同意」などの要件(表5)を満たす必要があり、ハードルは低くないとの見方が多い。
厚労省は在宅医療専門診療所について地域のかかりつけ医の「あくまで補完的位置づけ」との考えを示している。


後発医薬品の使用促進を評価

このほかの主な個別改定項目の要旨は表6の通り。前回改定で新設された地域包括ケア病棟については、手術と麻酔にかかる費用を包括範囲から除外し、出来高化する。地域包括ケア病棟が担う役割の1つに在宅や療養病床からの急性増悪時の対応があるが、現状では手術件数が少ないことが課題とされていた。入院料は据え置きのまま、手術料を外出しにしたことでどれだけ手術件数が増えるか注目が集まる。
今回の改定ではリハビリテーションにアウトカム評価が導入される。回復期リハビリテーション病棟において、実績が一定の水準に達しない場合に6単位を超えるリハビリテーションは入院料に包括となる。これは、①1人当たりの1日リハビリ提供単位数、②1入院当たりの平均的なADLの伸び─を3カ月ごとに集計し、2回連続で①が6単位以上、②が27点未満である場合を指す。
中医協支払側委員の幸野庄司委員は「医療の質という評価軸が導入された」と評価している。
また、さらなる後発医薬品の使用促進に向け、使用割合の高い医療機関を評価する。診療所では「外来後発医薬品使用体制加算」を新設。使用割合が70%以上の場合は4点、60%以上で3点を算定できる。また、後発医薬品が存在するすべての医薬品を一般名処方した場合の評価として、「一般名処方加算1」を新設する。3点を算定できる。
このほか、いわゆる大型門前薬局の評価についても見直す。薬局グループ全体の処方箋回数が月4万回以上のグループに属する保険薬局のうち、①特定の医療機関からの処方箋集中率が極めて高い保険薬局、②医療機関と不動産の賃貸関係にある保険薬局─の調剤基本料を20点に引下げる。
厚労省は4月からの改定実施に向け、3月上旬に関係告示・通知を行う。(診療報酬点数表の全文などは本誌HPの2016年度診療報酬改定関連資料から閲覧できます)


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