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小児領域におけるACP【家族の意向になりがちであること,思春期患者本人の意向を確認することが課題】

No.4872 (2017年09月09日発行) P.53

余谷暢之 (国立成育医療研究センター緩和ケア科医長)

登録日: 2017-09-12

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小児の臨床現場で,終末期における患者・家族の意向の尊重に関する話し合いと言えば,DNAR(do not attempt resuscitate)に関することであった。DNARは「急変時または末期状態で心停止・呼吸停止の場合に,蘇生処置をしないという取り決めのこと」と定義される。

ACP(advance care planning)とは「これから重篤な状態になったときにどこでどのようにどうやって過ごしたいかについて,個人およびそのケア提供者との間で行われる自発的な話し合いのプロセスである」とされている。DNARとの大きな違いは,結果だけでなくそのプロセスを共有することで,その背景や理由,価値観を共有することができる点にある。この過程を経ることで,直面する複雑な医療状況に対応することが可能になるが,小児においては予後の不確実さや両親の非現実的な期待などが障壁となり,実践することが難しいとされている。

小児領域におけるACPには2つの課題がある。1つ目は家族との話し合いになることである。家族の声は,「子どもの声を代弁するもの」と「介護者としての意向を表すもの」の2つの側面があることに注意する必要がある。つまり,親の意向は必ずしも子どもの意向でない可能性について考えておく必要がある。もう1つは,思春期年齢の患者との話し合いである。75%の思春期患者が,状態が悪くなる前にACPを行いたいと思っているとの報告があるが,実際の現場では,医師は本人とは話さず両親とだけ話すことも少なくない。思春期患者の特徴を把握した上で,本人の価値観を探っていく必要がある。


【解説】

余谷暢之 国立成育医療研究センター緩和ケア科医長

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