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(2)結核治療の基本的知識 [特集:耐性菌を出さないための結核診療]

No.4758 (2015年07月04日発行) P.26

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-15

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  • 結核治療は多剤併用が必須であり,現在の最強・最短の治療がイソニアジドとリファンピシンを柱とする標準治療である

    標準治療が可能であるのは標準治療薬に耐性がない場合であり,培養陽性であれば必ず薬剤感受性試験結果を確認する

    最短でも180日の服薬が必要であり,中断などによる治療の失敗を最小限にするために服薬支援が必須である

    地域医療の中で質が高い結核医療を完遂するためには,保健所および結核専門病院を中心とした,結核に関する地域医療連携が必要である

    1. 現在の標準的治療─結核医療の基準

    現在の結核の標準的治療はイソニアジド(INH),リファンピシン(RFP),ピラジナミド(PZA)およびエタンブトール(EB)またはストレプトマイシン(SM)の4剤を治療初期2カ月間(初期強化期),その後INHとRFPを4カ月間(維持期)継続する計6カ月(180日)間の化学療法(標準治療A)である。ただし,日本においては,高齢者および合併症を持つ患者が多いため,PZAが使用できない場合の治療法として初期強化期2カ月間にINHとRFPにEBまたはSMの3剤,維持期は7カ月間としてINHとRFP,計9カ月(270日)間の方法(標準治療B)も標準治療としている(表1)1)
    結核治療においては多剤併用が必須である。結核菌には自然耐性の菌がわずかではあるが一定の比率で存在し,1剤の使用ではその薬剤に耐性の菌が生き残る。たとえば,INH耐性は初回治療であっても3%程度存在するが,その場合にINHとRFPの2剤では事実上RFP単独使用となり,RFPにも耐性を獲得して多剤耐性結核になる。したがって,少なくとも3剤以上の併用が必須である。菌量が多い場合には複数の薬剤に耐性の菌も存在しうるので,薬剤感受性が確認できるまでは4剤使用が安全である。現在,世界の標準治療は,INHおよびRFPに初期2カ月間PZAおよびEBまたはSMを加えた4剤併用である。
    ただし,日本においてはPZAを使用しないB法も標準治療として挙げている。肝硬変やC型慢性肝炎がある場合などには肝障害が悪化するリスクが高く,PZAは使用できない。また,高齢者では副作用としての肝障害が起きた場合に全身状態が急速に悪化するリスクが高いので注意が必要である。これまでの学会の見解では,80歳以上の高齢者にはPZA使用は慎重にするよう記載している。しかし,PZAの使用の有無で肝障害の頻度は変わらない。また,使用しない場合には治療期間に1.5倍の9カ月間が必要となる。
    治療開始時重症で体内の菌量が特に多いと考えられる場合および合併症などのため免疫低下がある場合には再発のリスクが高いので,治療期間は3カ月間延長する。広汎な空洞,粟粒結核などの場合,また,HIV感染,糖尿病,免疫抑制剤使用の場合などである。
    薬剤感受性結核であって前述の標準治療が完遂できれば,治療成功はほぼ保証されると言ってもよく,再発も2〜3%以下である。しかし,INH,RFPのいずれか1つ以上に耐性であった場合,または使用できない場合には大幅な治療方針の変更が必要である。INHおよびRFPに感受性があることが確認できれば,EB(またはSM)は2カ月で終了してよい。培養陽性であって2カ月後に検査結果が判明していない場合には,感受性があることが確認されるまで継続しておいたほうが安全である。培養陽性であれば,薬剤感受性試験の実施およびその結果を確認することを忘れてはならない。

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