心の元気をキープするためには,全身の健康をケアする「セルフケア」が欠かせません。厚生労働省からの通達「労働者の心の健康の保持推進のための指針」で示されているメンタルヘルス4つのケアの1番目はセルフケアです(第2章p54にて解説)。
イキイキと健全な思考や行動力を生み出すためには,外界の刺激が五感を通じて全身からきちんと脳に伝わり,脳がそれらを正しく認知し感情や意思を生み出すというシステムが正常に働かねばなりません。体に痛みや不快感,倦怠感があったり,睡眠不足で脳が疲れ果てていたりしては,当然ながら前向きな思考や朗らかな感情も生み出すことができません。つまり,全身が調子の良いコンディションでなければ心という機能も元気に健全に作り出されないと言えるでしょう。このことからも,メンタルヘルス対策の基本として,まずは自分の体の調子を整え健康を維持するためのセルフケアがとても大切だとされているのです。
では,セルフケアとは具体的に何を指しているのでしょうか?何を心掛ければよいのでしょうか?筆者は次の4つのポイントで考えるのが一番わかりやすいと思います。
まずは,脳を含めた,体にある約60兆個もの細胞が健康で元気に働いてくれるように栄養を与えねばなりませんから「食事」が大切です。良質なガソリンを与えないと車が走らないように,食事は健康を維持する基本です。
また,「睡眠」も食事と同じくらい健康維持には欠かせません。体は睡眠中に全身の疲れを取り除くためのメンテナンスを行います。特に,脳は眠らなければ休むことができないという特徴を持つ臓器です。きちんと眠らなければ気力・知力・集中力・記憶力ともに,どんどん低下していきます。
そして「運動」。適切な運動を行わないと体によくないということは,子どもでも知っていることですよね。ほどよく適切な運動は体の健康だけではなく,心の健康にも大切です。デスクワークが多くなればなるほど,適度な運動を行わないと血の巡りが悪くなってしまい,脳の疲れが取れにくくなります。
もう1つは「リラックス(緩み時間)」。第1章のp27で触れたように,現代は自律神経バランスが崩れ過緊張状態の人が非常に増えています。デジタルなスピードに合わせて仕事を要求されるため,常に神経も筋肉も緊張している時間が圧倒的に多くなってしまうのです。それがゆえに自分でしっかり意識してリラックスする時間をキープし,心や体を緩ませることが必要なのです。
本項では,この4つのポイントから実践的なセルフケア法を提案していきたいと思います。
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