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低カリウム血症とともに代謝性アシドーシスを呈する原因は?【アニオンギャップ正常の場合は低栄養が原因のことがある】

No.4853 (2017年04月29日発行) P.60

林 松彦 (慶應義塾大学病院総合診療科教授)

登録日: 2017-04-25

最終更新日: 2018-11-27

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  • 低カリウム血症とともに高クロール血症を呈する原因として,下痢などによる重炭酸喪失に由来する代謝性アシドーシス,尿細管性アシドーシスなどが考えられますが,低栄養で重炭酸が低下することはあるでしょうか。また,代謝性アシドーシスで低カリウム血症も伴うとすれば,その原因は何でしょうか。

    (高知県 F)


    【回答】

    まず,代謝性アシドーシスは,大別してアニオンギャップが増加する場合(この場合は血清クロールは低下します)と,アニオンギャップが正常な場合(高クロール血症を伴います)にわけることができます1)

    前者の代表として,糖尿病にみられるケトアシドーシス,重症の循環障害などにみられる乳酸アシドーシス,メタノール中毒などの薬物によるアシドーシスが挙げられます。状況にもよりますが,これらの多くは高カリウム血症を伴います。

    一方,アニオンギャップが正常な代謝性アシドーシスとしては,何らかの原因による重炭酸喪失,すなわち下痢,尿細管障害が代表的な疾患となります。この場合,低カリウム血症と高クロール血症を伴います。低カリウム血症の原因疾患は,腎または消化管からのカリウムの,①排泄増加,②細胞内への移行,③摂取量の著しい減少,に大別されます。腎からの排泄増加としては原発性アルドステロン症,遺伝性尿細管疾患(バーター症候群,ギテルマン症候群など),ループ利尿薬投与などで,多くは代謝性アルカローシスを伴いますが,尿細管アシドーシスによるカリウム喪失の場合は代謝性アシドーシスを伴います。摂取量の著しい減少は,食品のほとんどはカリウムを含むため,実際には稀です。

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