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(4)転移・再発乳癌における 治療アルゴリズム [特集:個別化する乳癌への対応と工夫]

No.4726 (2014年11月22日発行) P.32

永井成勲 (埼玉県立がんセンター乳腺腫瘍内科副部長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-16

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  • 治療の目的は生存期間の延長およびQOLの改善である

    生命に危機の及ぶ内臓転移がないホルモン感受性症例では内分泌療法から開始する

    局所再発および領域リンパ節再発では切除も検討する

    閉経状況で内分泌療法の薬剤選択は異なる

    抗癌剤治療はHER2の発現状況に応じて決定する

    緩和ケアは診断後早期から行う

    1. 治療の目的と治療法の選択

    転移・再発乳癌は局所再発と領域リンパ節再発を除いて根治は難しく,治療の目的は生存期間の延長およびQOL(quality of life)の改善となる。薬剤の選択は多様であり,治療効果予測因子であるホルモン受容体およびHER2(human epidermal growth factor receptor 2)の発現状況,内臓転移の状況,再発までの期間などを考慮して個別に検討する。
    治療のアルゴリズムとしてHortobagyi1)が提唱したものが広く知られており(図1),生命の維持に差し迫る内臓転移がなく,ホルモン受容体陽性の場合は,内分泌療法がまず選択され,可能な限り逐次継続する。化学療法を選択する場合は,HER2の発現状況によって治療内容が異なる。
    本稿では,個別化する転移・再発乳癌における治療について述べる。

    2. 局所再発と領域リンパ節再発

    遠隔転移のない乳房温存術後の乳房内再発では,乳房切除術により局所の再々発率は10%以下に抑えられる2)。乳房切除術後の局所胸壁再発では,切除可能であれば最小限の手術を施行するが,局所再々発率が高く,放射線照射歴がなければ切除術後の救済放射線療法が有効である3)。局所再発切除術後の補助化学療法について,とりわけエストロゲン受容体(estrogen receptor:ER)陰性症例での有効性を示唆する前向き比較試験の報告4)がある。炎症性再発や切除不能の場合は薬物療法の適応となる。
    遠隔転移のない腋窩リンパ節や鎖骨上リンパ節再発では,外科的切除,放射線照射などの局所治療およびその後の薬物療法が個別に検討される。

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