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遺伝性乳癌卵巣癌症候群[私の治療]

No.5058 (2021年04月03日発行) P.40

平沢 晃 (岡山大学大学院医歯薬学総合研究科臨床遺伝子医療学教授)

登録日: 2021-04-05

最終更新日: 2021-03-30

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  • 遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and ovarian cancer syndrome:HBOC)は,BRCA1またはBRCA2(BRCA1/2)の生殖細胞系列病的バリアントを原因とする遺伝性腫瘍症候群である。BRCA1/2生殖細胞系列病的バリアント保持者では乳癌,卵巣癌,膵臓癌,前立腺癌などの関連がんを高率で発症する。BRCA1/2遺伝情報を知ることで本人のがん予防,がん個別化治療に役立つのみならず,血縁者のがん予防にも役立たせることができる。
    元来よりHBOC診療では,遺伝子医療部門で遺伝カウンセリングとリスク評価を経て遺伝学的検査を施行し,BRCA1/2の生殖細胞系列病的バリアント保持者に対して関連がんのサーベイランスやリスク低減対策が行われてきた。わが国でもリスク低減卵管卵巣摘出術(risk reducing salpingo-oophorectomy:RRSO)や,リスク低減乳房切除術(risk-reducing mastectomy:RRM)が実地臨床でも導入されてきたが,2020年4月からは乳癌または卵巣癌発症のHBOCに対する診療の一部が保険収載された。
    一方で,BRCA1/2生殖細胞系列病的バリアントにおいて発症した乳癌や卵巣癌に対しては,PARP阻害薬であるリムパーザ®(オラパリブ)が高感受性を示す。2018年にコンパニオン診断プログラムとして「BRACAnalysisTM診断システム(現名称はBRCA1/2遺伝子検査:SRL社)」が国内で承認され,がん診療からもHBOCが診断されている。

    ▶診断のポイント

    HBOCの診断は採血によるBRCA1/2の遺伝学的検査による。HBOCと診断されたことで,①HBOCであることを判定して本人のがん予防に結びつける,②抗癌剤のコンパニオン診断として個別化治療に結びつける,および③血縁者のがん予防につなげる,等が可能となる。

    BRCA1/2遺伝学的検査は,乳癌または/および卵巣癌発症者で下記のいずれかの項目にあてはまる例で保険適用となる1)

    ・乳癌を発症しており,以下のいずれかに当てはまる。
    ①45歳以下の乳癌発症,②60歳以下のトリプルネガティブ乳癌発症,③2個以上の原発性乳癌発症,④第3度近親者内に乳癌または卵巣癌発症者が1名以上いる,⑤男性乳癌を発症
    ・卵巣癌,卵管癌および腹膜癌を発症

    リムパーザ®(オラパリブ)は2018年に「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌」の適応,2019年には「BRCA遺伝子変異陽性の卵巣癌における初回化学療法後の維持療法」の適応を取得している。本薬剤の使用にあたりBRCA1/2遺伝学的検査がコンパニオン診断として用いられている。

    最近ではBRCA1/2遺伝子を含む複数の遺伝子の生殖細胞系列バリアントを同時に検出する多(マルチ)遺伝子パネル検査を用いてHBOCが診断されるケースもある(保険未収載)。

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