株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

ケモブレインについて 【化学療法が原因で生じる認知障害で,主な症状は記憶力・集中力・作業能力の低下】

No.4845 (2017年03月04日発行) P.60

喜多久美子 (聖路加国際病院乳腺外科)

山内英子 (聖路加国際病院乳腺外科部長・ ブレストセンター長)

登録日: 2017-03-02

最終更新日: 2018-11-27

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

化学療法が原因で生じる認知障害がありうると言われており,通称「ケモブレイン」と呼ばれている。発生頻度は17~70%とされ,記憶力・集中力・作業能力の低下が主な症状である。発生機序として,薬剤による神経新生や神経伝達物質の障害,脳血流や脳脊髄液の変化,海馬の機能低下が示唆されており,間接的に炎症やアポトーシス,酸化ストレスも関与していると言われている。

評価法について,がん患者の認知機能検査として推奨されている検査としては,trail making test,controlled oral word association test,Hopkins verbal learning test-revisedが挙げられているが,標準化はされていない。頭部MRIを用いた画像研究では,化学療法後の灰白質や白質の容積低下が指摘されており,それが認知障害と相関しているとする報告が多い。

治療は,行動療法と薬物療法の組み合わせが基本となる。行動療法には,脳トレーニングや,認知リハビリテーション,リラクゼーション,エクササイズ,コーピングなどがある。薬物療法としては,中枢神経刺激薬,アルツハイマー病治療薬,神経新生刺激薬や酸化ストレスを減少させる薬剤などが用いられることがあるが,わが国で実際にケモブレインに対して使用している施設はほぼない。

ケモブレインは,がんサバイバーシップにおいてQOLや就労へ影響を及ぼす副作用のひとつであり,その解明や治療介入に関してこれからも研究を続けていきたい。

【解説】

喜多久美子 聖路加国際病院乳腺外科

山内英子 聖路加国際病院乳腺外科部長・ ブレストセンター長

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top