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健康寿命 [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.79

横須賀 收 (千葉大学名誉教授、JCHO船橋中央病院病院長)

登録日: 2017-01-03

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少し年の若い友人が「健康寿命を考えるとそろそろ心配になってくる」という話をしていた。まだまだ、自分は大丈夫と思っていたが、計算してみるとそれほど余裕がないことがわかって、なるほどと納得した。年を取るほどに何故か時間が早く進む感じがするということもあるので、それほど、のんびりと構えてはいられないだろう。

仏教の言葉に四苦というものがあり、生病老死がそれにあたる。なんで老が苦しみなのだろうと、若いときにはあまり想像できなかったが、年を取ってくると段々にわかってくる。徐々に体が動かなくなって、痛いところも多くなるし、目も見えにくく、耳も聞こえにくくなる。脳機能が落ちて、記憶力や理解力も鈍くなるし、創造力などは著明に減退する。自覚しにくいものであるが、免疫機能が落ちてくることも大きな問題で、年を取るほどにがんになりやすくなる一因であろう。

長寿が多くの者の願いであるが、老化して長生きしてもダメなので、「不老」長寿でなければならないのである。やはり、健康寿命のあるうちに、いろいろやっておかなければならないと反省するこの頃である。「老麒は櫪に伏しても志は千里に在り、烈士暮年壮心已まず」という古の詩句もある。煩悩の多いせいか、あれもやりたい、これもやりたいと思うものの、これまでもできなかったのに、今さら、じたばたしても始まらないのかもしれない。

ただ、時間に限りがあることが身に染みてわかってはきたので、最も有効に、やりたいことをやらなければならないと思うが、なかなかそれができないのが問題である。何が最もやりたいことなのか、今さらという気もするが、ここがもう一度の考えどころであるに違いあるまい。残念ながら、世の俗塵に交わって抜けられず、残りの健康寿命を仕様もないことで、無駄に過ごしそうな予感がしてならない。既に十分に仕事を終えた、多くの先人たちが、その晩年にどう考えていたか知りたいところである。

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