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卒後40年を経て思うこと [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.77

井上登美夫 (横浜市立大学医学部長)

登録日: 2017-01-03

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定年まで1年半という時期を迎え、医学部を卒業以来、放射線医学に携わってきた軌跡を振り返ると、これほど急速な進歩と変革を遂げた分野は珍しいのではないかと感じる。特に放射線診断の領域は半世紀あまりの間に劇的な進歩を遂げた。私の卒後数年以降は放射線診断学のルネッサンスとも言える時代であり、CT以外にも核磁気共鳴画像(MRI)、超音波(US)、核医学検査(SPECT)などが次々と登場した。

私が専門とする核医学領域では、2000年代初期にPETが保険診療に使われるようになり、さらに2005年頃からCTとPETを一体化したPET/CTが登場し、ハイブリッドイメージングという概念が定着し、現在その最先端にあるのがPET/MRである。

私の世代の放射線科医が歩んできた40年間の放射線領域の変革の中で、新しい革新的な技術が出てきたときに必ずと言っていいほど共通した医師側の反応がある。言い方が難しいのであるが、平たく言えば「こんな高価なものは必要ない」という批判である。たとえば、PETからPET/CTが登場した時期には、「わざわざ高価なPETとCTの一体型装置を使うより、CTとPETを別々に撮影し、コンピュータを使って画像処理で重ね合わせをすればよいので一体型PET/CTは不要である」という意見が出され、一時は真剣に関連学会で議論されていた。しかし、現在では古いPETカメラの更新時は必ず一体型PET/CTになっている。ユーザー(患者さん)と市場が判断した結論と思う。

放射線科という狭い領域での経験ではあるが、我々臨床医は押し並べて保守的な人種であるとつくづく思う。新技術が登場し、5~10年の間に当初の自分の保守的な判断が間違っていたという結論が出ている事例をいくつも経験しながら、それでも次の新技術の登場に対し、同じ抵抗を繰り返している。現在も一体型PET/MRの必要性がPET/CTが登場したときと同じように問われている。しかしながら、人類のあくなき探求心は次々と新しい技術を生み続け、そして「生」を求める本来の人類の欲求が、医療経済上の課題を乗り越えて、またもPET/MR不要論を駆逐しているのか、5年後の状況を見守りたい。

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