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パーソナルヘルスレコード(PHR)とマイナンバーへの期待 [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.76

田口智章 (九州大学大学院医学研究院小児外科学分野教授)

登録日: 2017-01-03

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2016年の夏、ヨーロッパ小児外科学会に参加したところ、スウェーデンでは全国民の病気の予後調査が可能で、たとえば先天性巨大結腸症で乳幼児期に手術を受けた患児が、その後、学童期の成績は正常児と比較して劣るが、就職してからの収入は正常児と差がない、という発表があった。それを聞いて素晴らしいことだと思った反面、わたしは大変ショックを受けた。

我々は小児の手術を担当し、その子の行く末の責任の一端を担っていると自負しているが、その後定期的に受診したり追跡調査に協力してくれるのは一部で、悉皆性のある長期的な予後は不明な点が多いのが現実である。個人情報保護法がこれに輪をかけてハードルとなっている。疾病の長期予後、特に小児期に手術をした予後がどうなっているかを把握することは、治療法の評価とともにより良い治療の開発に不可欠であるが、不可能であるのが日本の現実である。

北欧のようなpopulation based studyを行うには、悉皆性のある疾患登録と個人の受診歴、健診歴や予防接種歴などのデータを結びつけるもの、さらに学業成績や就業後の収入(納税額から計算可能)とも連結するしくみが必要である。それを可能にする共通言語としてマイナンバーに期待している。

PHRとして、出生前からの胎児期のデータに始まり新生児、乳児、幼児期あたりまでのデータは母子手帳がある。さらに乳児・幼児検診のデータ、学校健診のデータなどがあるが、すべて管理がバラバラで、一定期間の保存の後、捨てられている。また、医療機関を受診した場合は診療録のデータや保険請求のレセプトデータなどがある。これらのPHRを有機的に結びつけ、小児から成人へのトランジションをスムーズに行えるしくみの構築をマイナンバーに期待したい。

小児がんは強力な化学療法や手術を含めた集学的治療により治療成績は飛躍的に向上した。一方、生存例の長期的な身体的知的成長障害、就学就労の問題、成人病、二次がんなどの多くの問題点を残している。そのため長期フォローアップと支援、および成人医療へのスムーズなトランジションが重要である。その目的達成にもマイナンバーに期待したい。

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