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医療的ケア児と社会参加 [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.65

髙橋昭彦 (ひばりクリニック院長)

登録日: 2017-01-02

最終更新日: 2016-12-27

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小児医療の発達で、退院後も人工呼吸器や経管栄養、たんの吸引などの医療が必要な「医療的ケア児」と呼ばれる子どもが急増しています。しかし、医療的ケア児を支える在宅医療、介護、保育、教育などの社会資源は少なく、家族やきょうだいにも多大な負担がかかります。

2016年9月、小学校に通う医療的ケア児のいる2家族と、北海道にキャンプに行ってきました。もちろん、子どもたちが飛行機に乗るのは生まれて初めてです。機内に持ち込む医療機器はあらかじめ届けておきます。空港では“Special Assistance”という特別な入口から入り、機内では子ども1人に座席3つを使います。ひじ掛けを跳ね上げ、座席に敷物を敷いて横になり、人工呼吸器や吸引器、モニター、酸素ボンベなどは座席の下へ置き、ベルトをつなげて体を固定します。離陸の際はドキドキして子どもの脈が150程度まで上がりました。また、上空では機内圧が低下して酸素飽和度が下がり、普段使わない子どもにも酸素吸入をしました。

今回お世話になったのは、病気とたたかう子どもたちに夢のキャンプを提供する「そらぷちキッズキャンプ」です。滝川市にあり、小児科医の細谷良太先生が代表です。ここでは医療的ケア児も普通に楽しみ、お風呂も入り、泊まることができます。滞在中は、馬に乗り、日本に数えるほどしかない車いすごと入れるツリーハウスで森林浴、さらにカレーづくりの材料を収穫したり、たこ揚げ、大きなシャボン玉、そして目の前の山に車いすの子どももみんな登りました。眼下に広がるキャンプ場と広大な大地は今も目に焼きついています。

きょうだいの皆さんも、それぞれに思いっきり遊びました。ご尽力頂いた関係者の方々に心より感謝いたします。

あるお母さんが、「これまでいろんな場面で、何かやろうとしても、無理だからと諦めてきた。でも、ここでは自分たちが思った以上のことを経験できた」と言われました。医療的ケアが必要というだけで、子どもが、きょうだいが、両親が、多くの我慢をしているのです。医療的ケア児が交通機関を使い、外出をし、戸外を歩くことは、子どもの成長とあたたかな社会の醸成につながると信じています。

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