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たかが痔、されど痔 [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.63

松島 誠 (松島病院大腸肛門病センター総院長)

登録日: 2017-01-02

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開設以来90年余の専門施設で肛門科の診療に携わって30数年になります。

わが国における痔核・痔瘻・裂肛などの良性肛門疾患患者数は人口の26~28%で約3000万人と考えられています。この中で肛門科の受診率は徐々に増加し、2008年の24.7%に比べて2014年には26.7%と増加していますが、決して多いとは言えません。羞恥心や「痔ぐらい」という患者さんの思いが受診を躊躇する理由と思われ、特に女性においてこの傾向は強いと考えられます。疾患の有病率をみると、痔核では男女間で差はなく、便秘などに起因する裂肛は2:3で女性に多く、痔瘻は5:1で男性に多く認められるとされています。

この27年間の当施設での入院手術12万899件のうち、痔核の手術件数は約3200件から2400件と25%減少し、直腸脱や痔瘻(女性の痔瘻も増加しているように思われます)は増加する傾向にあります。これは手術に代わる新たな治療法の出現や、高齢化に起因するものと考えられますが、痔瘻の増加理由などははっきりしません。

肛門疾患の60%を占める痔核は正常な構造の大きさの変化であり、その治療は自覚症状の改善を主眼に治療を行います。しかし、この自覚症状が実に多彩で、脱出・出血以外にも肛門や直腸の違和感や疼痛、残便感、排便困難、さらには異臭、肛門周囲の湿潤等々愁訴は多岐にわたり、複雑化し心療内科的な診療を必要とする症例も増えています。

外科的治療の手技は安全で比較的シンプルなものとも言えますが、的確な診断は、ある意味非常に難しく、注意深く訴えを傾聴し十分なインフォームドコンセントが必要とされます。望まざる結果にならぬよう、安易な痔核切除や痔核硬化治療は厳に慎むべきであります。

肛門良性疾患の手術は、根治性と機能温存の面で格段の進歩を遂げ、患者のQOL改善を含め十分に満足できるものとなっておりますが、そこには医療側の十分な疾患への理解と経験とともに、患者との良好な信頼関係の構築が必要であると考えています。

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