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特定健診は高齢者に有用? [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.57

尾﨑治夫 (東京都医師会会長)

登録日: 2017-01-02

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昨年も、私のクリニックに、市の健診を受けに多くの高齢者が訪れた。開設して26年が経過するクリニックでは、65歳以上の高齢者が8割以上を占めている。そんな中、Aさんがやってきた。一昨年の健診結果では、境界型の糖尿病があるくらいで、とても元気な老人だった。診察室に入ってきた姿を見ると、歩き方が妙に弱々しい。一昨年の受診時に比べ、かなり痩せていることがわかる。「どうしたの?」と私が尋ねると、「いやーカミさんが、このまま太ると旦那さんは糖尿病になるって保健師さんに言われて、野菜しか食わせてもらえないんだよ」。

後日の検査結果を見ると、アルブミン値以外はすべて正常範囲。HbA1cは正常化し、メタボ健診は見事クリア。ただ本人は痩せて、低蛋白の栄養不足で筋力が弱り、いわゆるフレイル(虚弱)の状態になっている。

74歳まで特定健診が行われていることによって、「太ってはいけない。肉は食べてはいけない。野菜中心に時々魚を」といった、高齢者にとって真逆ともいえる食事指導が行き渡り、全国的に生活習慣病は改善したが、栄養不足による低蛋白で、足腰が弱ってしまう高齢者が増えていると聞く。

実は、65歳をすぎるとちょっと小肥り、BMIでいうと24から27.4ぐらいが長生きすることがわかってきた。また、肉を中心に蛋白質を沢山摂り、体をよく動かし、趣味や社会活動を通じて、いろいろな人と交流を持つことが、健康寿命を伸ばし、認知症にもならないことがわかってきた。

私の考えでは、今後の健診は、30歳代から40歳代では、しっかりとした生活習慣病予防の徹底、いわゆる特定健診を徹底する。50歳代から60歳代前半は、医学的正常値に基づく通常の健診を受ける。65歳からは、生活習慣病についての基準値は大幅に緩め、血圧は150mmHg、LDL-コレステロールは160mg/dL、HbA1cは8%まではOKとし(もちろん二次予防が必要な人は除く)、軽度肥満も異常値としない。フレイル状態を重点的に評価して、早期から咀嚼、筋力などの衰えや社会生活への参加の有無などをチェックし、それらを予防していく健診に改めるべきと考えている。

2025年に向け、元気な高齢者で溢れる東京を創り出さなければならない。

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