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枕頭の電子図書は安眠の妨げ [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.53

早川 智 (日本大学医学部病態病理学系微生物学分野主任教授)

登録日: 2017-01-02

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筆者の産婦人科入局時の恩師、高木繁夫教授の教えで、今でも守っていることのひとつに、眠前の読書がある。「どんなに疲れて帰っても、お酒を飲んで帰っても、また当直の晩も寝る前30分は昼間に学んだことを教科書で確認するように」と教えられた。実際、臨床医にとって患者さんが何よりの教科書ではあるが、ともすれば「手で覚える」だけの診察所見や手術手技を系統的な知識として整理する習慣は大変に貴重である。若い医局員、特に研修医諸君に伝えている。基礎医学の教員に転じた後も査読論文や指導論文、主たる研究領域と関連領域の論文、書評を頼まれた本など、読まねばならないものは幾何級数的に増加した。

ここ数年は寝る前に仕事関連は止めて、好きな本か楽譜を仰向けになって電子図書で読んでいると、不思議なことに永遠に起きていられそうな気になる。実はこれは電子書籍のマジックで青い光は血中メラトニンレベルを55%減少させ(紙の本では、逆に18%増加)、入眠時間の遅れとREM睡眠の減少を来すという(Chang AM, et al:Proc Natl Acad Sci U S A. 2015;112(4):1232-7)。

ここ数年、教授会や学内委員会、学会の理事会・評議員会で下を向いている先生が多くなったのは、実に電子図書のせいだったのである。読書行為そのものよりもバックライト付き液晶画面の短波長がメラトニン分泌を抑制して概日リズムをずらすらしい。朝の光を浴びて覚醒する生活に何万年も適応してきた我々の脳は電子図書を朝日の光と誤解するのだろう。

米国睡眠財団の2014年の調査では、成人の89%と子どもの75%は寝室に電子機器を1台以上持ち込んでいるという。これが、学習障害や事故などの社会問題にどの程度関わっているかは明らかではないが、寝る直前まで強い刺激を受けながら、入眠剤を服用するというのは不自然である。

筆者はこの報告を読んでからは、高校生時代に購入して未だ読了しないカール・ヒルティの『眠られぬ夜のために』を入眠剤としている。読者諸賢も少し難しめ(あまり面白いと逆効果)の文庫本やペーパーバックを持ち込まれては如何。

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