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地方での全国的学術集会を経験して [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.40

石﨑武志 (金沢医科大学呼吸器内科学臨床教授、第91回日本結核病学会総会会長)

登録日: 2017-01-02

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参加人数の多い医学関連学会総会は宿泊施設などの問題で大都市圏内での開催はやむをえないが、中小都市での全国的学術総会開催には参加者と受け入れ側の両者にメリットとデメリットがあることに、福井市(第22回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会総会、2012)と金沢市(第91回日本結核病学会総会、2016)での2回の全国的学術総会を経験して気がつきました。

利点としては、全国からの交通アクセスが年々改善されつつある地元でのおもてなしは、会員に地元の文化・風土への関心を呼び起こし、地元にとっての観光産業を潤すという両面効果が期待できます。また、普段の診療業務に追われて、大都市圏で開催される全国的学術総会になかなか参加できない地元の医師職・看護職・薬剤師・理学療法士などの人達も、職場を抜け出しての短時間の参加も可能でしょう。当該領域の最新の医学情報にふれる良い機会と言えます。

また、問題点としては、2回ともに開催場所の自治体や大学からの期待以上の経済的支援を頂きましたが、地方によっては学術総会開催への地元支援が十分ではないところもあるでしょう。

2つの臨床系の学術総会で痛感したのは、人口密集の大都市(当然、大規模医療機関も集中)に目が向いているであろう製薬・医療機器メーカーからの支援がなかなか思うようにいかないことでした。企業に対しては、地方でのイメージアップ戦略に長い目で利することを働きかける継続的な努力も学会事務局や主催者側には必要と痛感しました。

ところで、最近は多職種構成の医学・医療関連学会の勢いが目立ちます。慢性疾患と併存症が当たり前の超高齢社会を迎えて、まさにチーム医療が必須となってきた時代背景の産物でしょう。学会運営には会員数の担保を得て、社会への啓発・発信力、社会での認知度、そして会員教育サービス向上が期待できます。伝統的な医師のみの単一構成学会が生き残るには種々の改革が必要となるでしょう。

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