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人と社会を診る医療、多様性に学ぶ医師の使命 [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.30

三宅 琢 (東京大学、株式会社Studio Gift Hands 代表取締役、医師)

登録日: 2017-01-01

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私は就労に困難さを抱える労働者への支援(合理的配慮)のあり方を指導する産業医、タブレット端末などを用いた視覚障害者ケアを実践する眼科臨床医、企業のメンタル疾患関連のメンタル法務主任者という、3つの専門性を持った医師です。日々の業務の中で臨床医としては治療困難な患者たちの生活を向上させる情報提供を行い、産業医としては多様な課題を抱える労働者のニーズに学ぶことを日課にしています。

私が複数の専門性を持って患者や労働者との対話を重要視する理由は、現代社会における産業医の職務と自分自身の使命にあります。産業医の職務は労働者の健康保持増進と業務起因性の健康障害を防ぐこと、専門知識を活かして企業と労働者を働くことで不幸にしないことです。

現代人が抱えるメンタル不調の要因のひとつは仕事と人の不適合にあり、産業のグロバール化や第三次産業へのシフトと外国人労働者をはじめ労働者や企業の抱える課題の複雑化に伴い、産業医に求められる職務も多様化しています。このような激動の時代において、産業医に求められる専門性は多様性への深い理解と幅広い知識による応用学であると考えます。産業医として多様性を学び人や社会のあり方について探求する行為は、私自身の医療人としての視野を幅広いものへと成長させてくれています。

私はかつて外科医としての自分のキャリアに挫折し白衣を脱いで産業医となった日から、診断と治療よりも人の健康と生き方に関心を持つようになりました。今から思うと医療、産業保健、支援工学、教育、介護と分野を越えて日々学ぶことで、本当の意味で病と人を診ることができる医者になったと感じています。また医者も1人の労働者であり、仕事との不適応により不調に陥ることがあります。産業医という天職を得て自分の個性に合った働き方を見つけられた私は、分野を越えて患者や労働者のことばに学び、応用学としての新しい産業医という働き方を追求し続けていくつもりです。また、医療者自身が働くことで不幸になることのないように、同じような働き方に関心を持つ後輩たちの育成と教育にも尽力する使命があると思っています。

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