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行政はもっと国民に説明を [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.23

大川 淳 (東京医科歯科大学医学部附属病院病院長)

登録日: 2017-01-01

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医学部附属病院長となり半年が経過しましたが、特定機能病院に求められる医療安全問題、独立大学法人の一員としての経営問題に課題が山積しているのを実感しています。その中で気になるのは、厚労省が大学病院に求める役割について、国民への情報伝達が不足している点です。

厚労省の医療のしくみに関する政策誘導は、保険点数の上下で行われます。その変更に対応するため医療機関は努力、腐心するわけですが、制度改革は大抵の場合、患者負担が増えるので受けがよくありません。紹介状なしの初診、あるいは逆紹介後の再診も、飛び込みの場合には選定療養費を必ず徴収する制度が本年から始まりました。

重症や難病の患者をケアし、安定期に入った患者を地域に返す仕組みを大学病院に求める方向性には賛成しますが、長期にわたり大学病院に通院していた患者に対し、もうここでは診ることができないから、地域の診療所に通院してくれといって逆紹介しようにも、患者さんからすぐには納得は得られません。

私自身は整形外科が専門ですが、逆紹介をお願いするときに、医療の仕組みや大学病院の立場を説明するために30分以上かかることもあります。もちろん、紋切り型に紹介状を渡して、再診予約を拒むわけにもいきません。制度改革自体は妥当ですが、行政は国民への説明をもっと広く行ってほしいと思います。その説明を現場の医師が個別に行うことは、その負担をさらに増やすことになります。

逆紹介の問題解決に重要な点は、病診連携に安心感を持てるかどうかです。いざとなったら大学病院にかかりたいけれど、いったん受診予約が途切れたら再び診てくれないのではないか、といった漠然とした不安感が転医をためらう理由のようです。病状の悪化や救急のときにご紹介頂ければ必ず診ると約束し、何とか納得して頂いています。同時に、地域医療構想を含めて、病院機能分化、病診連携に関してもう少し行政側からのアナウンスが国民にあってしかるべきと思います。ICTの進歩で患者情報のやり取りは画像検査も含めて急速に発展していますが、課題は医師─患者間の心理的隔たりと感じています。行政の前向きな関与をお願いしたいところです。

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