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術式は誰が決めるのか [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.131

岩瀬拓士 (がん研究会有明病院乳腺センター乳腺外科部長)

登録日: 2017-01-05

最終更新日: 2016-12-26

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乳癌の治療は私がこの仕事に携わるようになってからも、本当にめまぐるしく変化してきた。分子標的治療薬などの薬剤の変化も著しいが、乳房温存、センチネルリンパ節生検といった外科治療の分野でも大きな変化が見られている。治療する側の医師でさえ、その変化の大きさと考え方の違いに、とまどっているに違いない。

術式の選択を左右する大きな変化が最近あった。人工物による乳房再建が保険適用となったことである。これまで乳房を温存したくても、広範に広がるがんのために乳房切除を余儀なくされていた患者にとってはありがたいことこの上ない。以降、再建を伴う乳房切除という術式が選択肢として加えられた。結果、何が起こったか。温存手術は減少し、その分、乳房切除+再建の術式が増加した。乳房を失うのは耐え難いという理由から、かつては変形や再発の危険を冒してまで温存手術にこだわった患者が、乳房切除+再建に移行したことは容易に想像できる。こうした患者を救うために保険適用への活動をしてきたわけで、報われたと感じる。

それにしても温存の減り方が激しい。一時は7割を占めた温存手術が4割まで落ち込んでいる。従来、普通に温存手術を選択していた患者も、その一部が再建に移動しているのである。

温存を止めた理由は、部分切除でがんが残る不安、術後の乳房の変形に対する不安、術後乳房照射に対する抵抗感などであろう。確かに、乳房切除+再建によってこれらは解消されるが、大事なことを忘れてはいないか。「再建乳房は所詮つくり物の乳房であり、安全に温存できた自身の乳房にはかなわない」ということを、である。患者が再建を希望したときに、医師が温存のメリットを主張しきれていないのか、医師も患者も異物感や拘縮、破損などの再建のデメリットに気づいていないのか、その詳細は不明であるが、おそらく両方であろう。

術式は誰が決めるのか。もちろん最終的な意思決定は患者にあるが、プロの乳腺外科医ならば患者の最善の利益を考え、十分に患者と話し合い、適切に誘導して欲しいものである。

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